「地獄の黙示録」 1979年 アメリカ

B002DQQKV2地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]
角川エンタテインメント 2009-07-17

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 正確には2001年に発表された、超巨篇(202分もある)の完全版を観ました。コッポラの作品の中では俺はゴッド・ファーザーを抜いて一番好きな作品であり、戦争映画というジャンルで言えばフルメタル・ジャケットの次に好きな作品です。
 本作は「闇の奥」という小説を原作としている。「闇の奥」自身は1899年発表で、ベトナム戦争という舞台は映画化されるに伴って変更されたものであり、小説ではアフリカのコンゴの奥地へ向かっていくストーリーです。俺は1904年訳を読んだので日本語でも理解が難しかったけど、これもまた面白い。この闇の奥という小説に潜む狂気!これがまたベトナム戦争にやたらと合う。この二つを結びつけただけでも奇跡と言える。
 主演はチャーリー・シーンのお父さんマーティン・シーン、そしてマーロン・ブランド。他にもデニス・ホッパーロバート・デュバル錚々たるメンバーが出演している。チョイ役でハリソン・フォードも出ている。まったくかっこよくない役だが(笑)
 ベトナム戦争といえば狂気。まさに狂気。この地獄の黙示録は狂気のるつぼだ。ホラー!ホラー!

 あらすじ
 ウィラード大尉(マーティン・シーン)は一度はベトナム戦争を除隊となり故郷に戻るが、うまくもとの生活に戻れず結局ベトナム戦争へ舞い戻ってきてしまった。ウィラードは特殊任務を数多くこなしてきた過去があり、そんなウィラードにまた特殊任務が与えられた。それは同じアメリカ人であるカーツ大佐の殺害だ。
 軍の上層部はカーツ大佐が命令に背き、頭がおかしくなったから殺せというが、このベトナム戦争に頭の正常なやつはいるのだろうか?そんな疑問をいだきながらもベトナム奥地へと向かっていく。
 奥地へ向かうにつれ、戦争は混乱が極まり、またカーツ大佐の情報を集めるに従い、ウィラードはカーツに尊敬の念を抱き始め…
 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 個人的にはロバート・デュバルのキルゴア中佐が好きすぎてたまらない(笑) サーフィンをするために村を一個ぶっ飛ばし、まだ制圧もしきれてないうちからサーフィンをはじめようとする。頭が完全にいっているが何故か憎めない(笑) カーツは実際は慎重な調査の結果、ベトナム人大佐等を4人殺して頭がイカれたと判断されたが、キルゴア中佐はサーフィンのために仲間が死んでもお咎めなし、という処がまた狂気だ。
 次の拠点では戦場とは思えないほど光々と光り輝き、緊張感もなく、酒とドラッグにまみれて、スタジアムのような建物に性欲が溜まりまくった男たちにプレイボーイの女達が近寄り、現地人達が覚めた目でフェンスの外から眺めてる。結局ダンスも半ばで暴徒と化した兵士達により崩壊してしまう。ここに秩序があるとは思えない。
 さらに次の拠点ではついに秩序の完全崩壊により軍隊ですらなくなっている状態に陥っている。指揮官はなく、責任者もなく…さらにはプレイボーイの女達が不時着しても手当もせず…おかげでウィラード一行は美味しい思いをするわけだが。
 フランスのプランテーションでは、久々の秩序らしきものに触れるが、やはりフランス人達も病んでいる。負け続きのフランスのコンプレックス、アメリカの戦争に巻き込まれた事に対する憤慨。未亡人もヤクに溺れ病んでいる。
 乗組員もだんだんと狂気に犯される。特にランディがプレイボーイの女との一件以降、口数も少なく自分の内側に篭り気味になっていく。
 カーツ大佐に会い、囚われてから緩やかにカーツ大佐の洗脳が始まる。もともとカーツは間違っていないという先入観とこれまでの狂気により、ウィラード自体にカーツに対する憎しみはない。しかし、カーツに巣食う闇を感じ取ったウィラードは、カーツ自身が殺されることを願っていると考え、原住民たちが水牛たちを牛刀で斬り殺す祭りの中、ウィラードはカーツを殺す。
 神と崇められたカーツを殺したウィラードは、神を超える存在となり、新たに原住民に崇められる対象となる。しかしウィラードは独立王国を築く野望はなく、軍にも興味は無いがもとに戻ることにする。