「ジャーヘッド」 2005年 米国

B0026P1KMYジャーヘッド 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]
UPJ/ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08

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 「アメリカン・ビューティー」サム・メンデス監督が現代の戦争をあの独特のブラックユーモアで描いた映画である。"ジャーヘッド"とは海兵隊の髪型がジャー(電子ポット)の頭にいていたから、そしてジャーと一緒で"中身がからっぽ"だから付けられた蔑称のこと。
 「フルメタル・ジャケット」を意識した作りになっていて、あのベトナム戦争の狂気と湾岸戦争の狂気を対比させようとしているのがわかる。
 サム・メンデスらしい皮肉と妄想が入り乱れ、映像的にも面白い作りになっている。また「ブロークバック・マウンテン」ジェイク・ギレンホール「Ray / レイ」ジェイミー・フォックスなどの名優たちがいい味を出している点も注目だ。

 あらすじ
 スオフォード(ジェイク・ギレンホール)は大学に進学するか迷いながらも海兵隊の道を「誤って」進んでしまった。海兵隊の世界は「フルメタル・ジャケット」よろしくの世界で、周りはアホだらけだった。
 サイクス三等軍曹が狙撃手になるチャンスを与えてくれ、また厳しい訓練により、スオフォードはついにイラクの地へと派兵されることになった。
 はやる気持ちが押さえきれないままイラクへ来るが、政治家の和平交渉により戦闘はなく、ただただクソ熱い砂漠の中でマスを掻く毎日にだんだんイライラが募り…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 ベトナム戦争では空軍の支援射撃とかはあったとしても、まだまだ陸軍が戦闘をきって攻め込み直接攻撃を行った。陸軍が輝かしいころであり、その激しさ故に精神に大きな問題を引き起こす人が多数発生した。
 一方、湾岸戦争のころには主役は空軍に譲られてしまい、空軍による爆撃のあとに占領するために陸軍が攻め込む形になってしまった。もはや海兵隊は猛者である必要がなくなってしまった。
 文字通り死ぬほど訓練してきて、あれだけ煽られてイラクへやってきたのに、やることはマス掻くかサソリを捕まえたりする遊びを発見するかしかない。ヒマでヒマで死にそうで、でもアメリカには帰れず、アメリカに残した彼女は隣の男とヤリまくってるかもしれない…
 いざ進軍したと思ったら、空軍が爆撃したあとで黒こげの死体を見るか、敵が撤退する際に油田に火を投げ入れて油まみれのクソみたいな砂漠を進むだけ。オレは何をしにきたのかとみんなが思い始める。女とヤルこともできず、酒を飲むこともできず、クソ熱い砂漠から逃れることもできず、人を殺すこともできない。何もできないのだ。
 そんな中、ついに狙撃の命令が下りたことで喜々として戦場へ向かうが、あと一歩のところでそのチャンスすら逃してしまう。疲れきってキャンプへ戻ると戦争は終わっていた。次のチャンスは永遠に来ない。初めて打った弾はむなしく夜空に消えるだけだった。
 この映画は戦争映画の名作へのオマージュがいくつかありますね。最初のシーンはモロに「フルメタル・ジャケット」だし、油田が燃えるシーンは「地獄の黙示録」のラストシーンあたりを彷彿とさせますね。とくに「地獄の黙示録」はキャンプで見ていた映画がそうでしたしね。
 戦争のむなしさ・バカバカしさをこんな形で表現するのが新しい。やっぱりサム・メンデスは面白い監督だなぁと感じさせますね。