「エレファント・マン」 1980年 アメリカ

B0026P1KTWエレファント・マン 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]
UPJ/ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08

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 アンソニー・ホプキンスが出演、そしてデビッド・リンチ監督の名作だ。「エレファント・マン」とは実在の人物で、あまりの奇形のため、「お腹の中にいる頃に、象に踏まれたせいで奇形になった」との触れ込みでその名前で見世物小屋に出演したのだ。多少の脚色や時系列の入れ替えはあるものの、現実にそった物語となっている。
 デヴィッド・リンチらしい造形や映像で、エグくもある。でもエレファント・マンを通じて人とは何かを感動的に表現している。ある種、「白痴」や「フォレスト・ガンプ」的な、迫害された人間が持つ純真さというものを訴えかけてくる。最後まで目が離せない名作だ。

 あらすじ
 "エレファント・マン"ジョン・メリックはそのあまりの奇形のため、見世物小屋の目玉にされていた。外科医のトリーブス(アンソニー・ホプキンス)はふとしたことからジョン・メリックの存在に気付き、病院にかくまう。
 トリーブスの看護や、院長や有名な女優など親交を深めたりすることで、ジョン・メリックはすこしずつ人間らしさを取り戻して行くが、病院の中には不治の病の人間を匿うことや、トリーブスは売名行為のために匿っているなどという誤解、そして単純にジョン・メリックの奇形を嫌うものなどから、疎ましく思われもした。
 そんななか、病院の警備員がこともあろうか、人々から金を取って夜中の病院に招き入れ、再びメリックを見せ物にしようとし…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 ジョン・メリックが始めてトリーブスの奥さんという、「美しい女性」から優しくされて思わず感動してしまうシーンにはぐっときますね。そして女優のケンドール夫人との読書。ジョン・メリックは白痴ではなく、高い知性と美しい心を持っていることがわかります。これまであまりに陰惨な生活を送っていたため、些細なことでも大きな感動として受け取れたんですね。
 しかし、バイツによって再び見世物小屋に戻されてしまう。産まれてこのかたずっといたままであれば見世物小屋も耐えられたかもしれない、しかし一度人間らしい生活を経験してしまっては、もう戻れない。結局はその生活に耐えられず衰弱してしまう。
 幸い、仲間たちに助けられて、ロンドンに戻ってくるが、その駅での事件が起きてしまう。子供にからかわれ、逃げ惑い、トイレに追いつめられたときの「これでも人間なんだ!」という悲痛な叫び!
 なんとか病院に戻ることができ、平穏に過ごすなかで、演劇場でケンドール夫人をはじめとして、多くの人にようやく受け入れられた。ジョン・メリックは一人の普通の人間として受け入れられた。これが最もうれしいことだったのだ。この人生最高の時に、最後の一つである仰向けで寝ること−それは死を意味する−を決心する。いつまた迫害される生活に戻るかわからない。人生の絶頂の時に、自ら命を絶つことで最高のまま人生を終えたかったのだろう。悲しいが、幸せな選択だったのかもしれない。
 ちなみに、実話としてはメリックは12才ぐらいまでは親の元で育ったらしい。その後、継母とうまく行かず独り立ちするが、奇形がすすんだこともあって生活が立ち行かなくなり、救貧院に入り、その後、自らの希望で見世物小屋に入ったらしい。当時は見世物小屋という存在はそれほど迫害されるべきところでも無かったようだ。奇形であることはある種の個性として認められたようだ。でも時代として見世物小屋も禁止されていよいよ生活ができなくなったタイミングでトリーブスのいる病院に保護された、というのが正しい時系列だそうだ。