「エレファント・マン」 1980年 アメリカ

B0026P1KTWエレファント・マン 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]
UPJ/ジェネオン エンタテインメント 2009-07-08

by G-Tools
 アンソニー・ホプキンスが出演、そしてデビッド・リンチ監督の名作だ。「エレファント・マン」とは実在の人物で、あまりの奇形のため、「お腹の中にいる頃に、象に踏まれたせいで奇形になった」との触れ込みでその名前で見世物小屋に出演したのだ。多少の脚色や時系列の入れ替えはあるものの、現実にそった物語となっている。
 デヴィッド・リンチらしい造形や映像で、エグくもある。でもエレファント・マンを通じて人とは何かを感動的に表現している。ある種、「白痴」や「フォレスト・ガンプ」的な、迫害された人間が持つ純真さというものを訴えかけてくる。最後まで目が離せない名作だ。

 あらすじ
 "エレファント・マン"ジョン・メリックはそのあまりの奇形のため、見世物小屋の目玉にされていた。外科医のトリーブス(アンソニー・ホプキンス)はふとしたことからジョン・メリックの存在に気付き、病院にかくまう。
 トリーブスの看護や、院長や有名な女優など親交を深めたりすることで、ジョン・メリックはすこしずつ人間らしさを取り戻して行くが、病院の中には不治の病の人間を匿うことや、トリーブスは売名行為のために匿っているなどという誤解、そして単純にジョン・メリックの奇形を嫌うものなどから、疎ましく思われもした。
 そんななか、病院の警備員がこともあろうか、人々から金を取って夜中の病院に招き入れ、再びメリックを見せ物にしようとし…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 ジョン・メリックが始めてトリーブスの奥さんという、「美しい女性」から優しくされて思わず感動してしまうシーンにはぐっときますね。そして女優のケンドール夫人との読書。ジョン・メリックは白痴ではなく、高い知性と美しい心を持っていることがわかります。これまであまりに陰惨な生活を送っていたため、些細なことでも大きな感動として受け取れたんですね。
 しかし、バイツによって再び見世物小屋に戻されてしまう。産まれてこのかたずっといたままであれば見世物小屋も耐えられたかもしれない、しかし一度人間らしい生活を経験してしまっては、もう戻れない。結局はその生活に耐えられず衰弱してしまう。
 幸い、仲間たちに助けられて、ロンドンに戻ってくるが、その駅での事件が起きてしまう。子供にからかわれ、逃げ惑い、トイレに追いつめられたときの「これでも人間なんだ!」という悲痛な叫び!
 なんとか病院に戻ることができ、平穏に過ごすなかで、演劇場でケンドール夫人をはじめとして、多くの人にようやく受け入れられた。ジョン・メリックは一人の普通の人間として受け入れられた。これが最もうれしいことだったのだ。この人生最高の時に、最後の一つである仰向けで寝ること−それは死を意味する−を決心する。いつまた迫害される生活に戻るかわからない。人生の絶頂の時に、自ら命を絶つことで最高のまま人生を終えたかったのだろう。悲しいが、幸せな選択だったのかもしれない。
 ちなみに、実話としてはメリックは12才ぐらいまでは親の元で育ったらしい。その後、継母とうまく行かず独り立ちするが、奇形がすすんだこともあって生活が立ち行かなくなり、救貧院に入り、その後、自らの希望で見世物小屋に入ったらしい。当時は見世物小屋という存在はそれほど迫害されるべきところでも無かったようだ。奇形であることはある種の個性として認められたようだ。でも時代として見世物小屋も禁止されていよいよ生活ができなくなったタイミングでトリーブスのいる病院に保護された、というのが正しい時系列だそうだ。

「ガタカ」 1997年 アメリカ

ガタカ [DVD]

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 イーサン・ホーク、ウマ・サーマン(この映画をきっかけとして二人は結婚した)、ジュード・ロウの3人が出演しているSF映画である。一度観たら忘れられない印象を残す映画だと思っていて、いろんなシーンを覚えていたのだが、改めて見直してみると思った以上に深くてぐいぐい引き込まれる映画だったことに驚いた。
 ぱっと見はとても地味な映画で、淡々と物語が進んで行くような映像だったりするし、歯の浮いたセリフが飛び出すし、そもそもの設定も少し無理が有るような気がする。でもそんなの関係ない!それをカバーできるだけの、キレイな映像であり、真に迫ったセリフであり(特にイーサン・ホークジュード・ロウの会話とか)、奇抜なアイデアなのだ。
 一度観たら忘れられない。これは保証する。

 あらすじ
 遺伝子工学全盛の時代、ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、宇宙基地"ガタカ"で宇宙飛行士に選ばれたエリート中のエリートだ。人々は遺伝子で能力を測られるようになっていて、面接は不要。血をほんの少し機械にかければ能力が測られる時代なのだ。ヴィンセントは遺伝子テストを満点に近い点数をたたき出している。しかし、ヴィンセントは自らの遺伝子でテストされているのではなく、偽りのテストで高得点を出していた。
 つまり、ヴィンセントは本来ならば遺伝子に欠陥のある不適合者なのだ。しかし、高い金を払い、遺伝子的エリートのジェロームに成り代わって生きているのだ。本当のジェロームジュード・ロウ)は、遺伝子的には申し分のないエリート中のエリートだが、事故にあって両足に障害を持ってしまったのだ。いくら遺伝子的に優秀であっても、障害を持っていれば宝の持ち腐れである。だから自分の遺伝子を切り売りしているのだ。ジェロームは血や髪の毛や尿をヴィンセントに提供し、ヴィンセントはエリートとして働く。その見返りに金を得るのである。
 ヴィンセントは、身分詐称という犯罪を犯してでもなりたかった宇宙飛行士に選ばれ、1週間後に土星の衛星"タイタン"に行くことが決定している。しかしそんなとき、ヴィンセントの上司が殺害されるという事件が起こった。そして遺体から、ヴィンセントの眉毛が発見された。
 この事件に協力すべく、ヴィンセントの同僚であるアイリーン(ウマ・サーマン)が警察の捜査をサポートすることになった。アイリーンは、すべてに完璧な成績を残すヴィンセントを疑い…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 この物語は、たとえ人が本来的に備わった身体に問題があったとしても、強い希望と信念を持つことですべては克服できる!という強いメッセージが込められている。たとえ遺伝子的に優れていたって、それにかまけてしまえば能力は育たない。また逆もしかりである。
 遺伝子的にというだけで、ちょっと先の未来だったり、別世界の話と思ってしまうけど、実態としては今の世の中だって代わりはないのではないだろうか?遺伝子というのを学歴にしてみたり、家柄にしてみたり、人種にしてみたり、信条にしてみたり…世の中には本来的意味とは関係のない差別がはびこっている。だからこの話ってのは実はめちゃくちゃ俺たちに近い話なのだ。だから、映画を観ていてなぜか実感できる。実感できるから、本当に苦しくなる。
 結局、上司を殺したのは本当にヴィンセントではなかったが、もし上司がヴィンセントの正体を暴いていたら、ヴィンセントは殺しただろうな。それはヴィンセントの正体を疑ったアントンが家に操作に来たときの様子から伺える。しかしアントンが地下に入らなくて良かった。もし地下に入っていたら、ヴィンセントは実の弟を殺すことになっていただろうから。
 弟との再会のシーンは迫ってくるものがありましたね。アントンはこれまで見下していた兄に負け、そして兄はいなくなった。そんな兄に対してコンプレックスを抱いていたのに、目の前に自分の捜査官としての地位よりも遥かに高い宇宙飛行士として現れることでアイデンティティが崩壊しかけるわけですよね。だから弟はアイデンティティを取り戻すために兄にもう一度勝負を挑むのです。以前の度胸試しのときは、アントンが"やめておけばいいのに"という立場だったのに、今回はヴィンセントに"やめておけばいいのに"と言われてしまう。そして事実としてヴィンセントはもう一度勝ち、アントンは完敗してしまう。
 そして、ラストシーン。ここが忘れられない。毎日検査をする医者はヴィンセントの正体を知っていたですね。でも、医者はその不正を暴かなかった。なぜなら、医者にとってヴィンセントは希望の星だった。不適合者でもエリート中のエリートになれる可能性があることを証明する人間だからだ。なぜそれを証明することが医者にとって良かったかというと、医者の息子が不適合者だったからだ。医者はヴィンセントを見ることで、自らの息子ももしかしたら…と想像したのだった。
 しかし、ジェロームの死は悲しかった。いや悲しむべきではないのかな。彼にとって納得のいく死だったのだろう。ジェロームは自らの心の弱さにより、夢を失ってしまった。でもその失った夢をヴィンセントはかなえてくれた。その夢を一緒に見るだけでジェロームはうれしかったのだ。だからヴィンセントが夢を叶えることにより、ジェロームの人生は完成したと感じ、今後はジェロームが生き続けることがヴィンセントの邪魔になるだけと悟って、自殺したのだろう。でもそれは敗北や絶望でもなく、ヴィンセントの手伝い程度の感覚だったんじゃないだろうか。
 いやー、しかし面白かったですね!何度も観たくなる映画だなぁと感じました。

iOS6で完全脱獄してみた

ついにiOS6で完全脱獄することができるようになりました。脱獄ツール「evasi0n」が発表された後すぐに脱獄し、ここ一週間ほどでいろいろな脱獄アプリを入れて落ち着いてきたので備忘録を兼ねて書いておこうと思います。

  • まずは脱獄
    何はともあれ脱獄しなければなりません。脱獄方法はTool 4 Hackさんの記事がとても良くまとまっています。Tool 4 Hackさんは他にも脱獄関連の記事が充実しているのでRSSにぶっこんでおくといいでしょう。
    とはいえ、脱獄自体は脱獄アプリをPC/Macにインストールして、iPhone/iPadをPC/Macに接続した状態で起動すればものの5分ぐらいでできます。あっけなさすぎて感動する暇もありません。
    脱獄自体は自己責任でよろしくお願いします。脱獄してしまうと、Appleの保証から外れてしまいますし、最悪壊れる可能性があります。また、iOSのアップデート時に脱獄アプリ側が対応されないと、再び入獄してしまうのでアップデートがすぐ出来ないという問題もあります。
  • おすすめのアプリ
    • SBSettings
      兎にも角にもこれを入れましょう。このアプリはWi-FiのON/OFFや機内モードなど、設定.appの奥にある設定をNotification上から設定できたりします。いちいち設定.appを開かなくても設定できるのは非常に精神衛生上楽です。また一緒にインストールされるActivatorというアプリによって、ステータスバーを左右にスワイプするだけでそれらのON/OFFやタスクリストを表示できたりします。まぁとにかく必須です。
    • AndroidLock XT
      有料アプリです。これを入れるとAndroidのような画面を予め決めた形でなぞることでロックを外せるようになります。パスコードは面倒だけど、ロックはかけたい人には持って来いのアプリです。
    • Zephyr
      有料アプリです。これを入れるとアプリの切り替えを二本指(もちろん1本でも4本でも!?)で画面の右から左にスワイプするなどで切り替えることができます。以前入れたときは重かったのですが、かなり改善されたようで楽に使えます。
    • StatusBarCustomClock4
      ステータスバーの表示をいじれます。時間だけでなく、日付や曜日を表示させることができます。
    • Bolt
      バッテリーアイコンを消せます。基本的に数値で充電状況を表示している人には無用なので、消しましょう。またこのアプリだと、充電時だけ充電中であることがわかるアイコンが表示されます。
    • Five Icon Switcher/ Five Icon Dock/ Five-Column SpringngBoard
      それぞれマルチタスクバー、ドック、ホーム画面を5列表示にします。最初は少し窮屈に感じるかもしれませんが、慣れますし、ホーム画面数がぐっと少なくなるのでアプリを探すのが楽になります。
    • MapOpener
      iOS6にすると純正地図アプリが改悪されてしまいますね。Google Mapsが代替アプリとして優秀ですが、Safari等のリンクでは純正アプリが開かれてしまいます。このアプリはそのデフォルトの地図アプリをGoogle Mapsなどに変更できます。
    • Browser changer
      MapOpenerのブラウザ版です。Chromeを使っているのでデフォルトをChromeに変えました。
    • SSPatcher iOS 6
      カメラ撮影時の音を消せます。悪いことに使う気はないですが、静かな所で取るときとか音がなるとイヤですよね。このアプリはマナーモードの時だけ音を消せます。
    • NoSpot
      Spotlightを使わない人からすると、ホーム画面でホームボタンを押してSpotlight画面に行くのがストレスです。このアプリを入れるとSpotlightを消せます。

いやー、脱獄すると快適ですね!後はChromeを爆速化させるNitrousを入れたいのですが、なぜか買えない…また特定のWi-Fi下ではパスコードを無効化できるAutoProtect for iOS6も入れたいのですが、AndroidLock XTと競合しそうだったので入れてませんが試してみたいですね。

悪魔で脱獄は自己責任で、でもハマること間違いなしです。

『米長邦雄永世棋聖 vs ボンクラーズ プロ棋士対コンピュータ 将棋電王戦』を見てきた

 昨日行われた『米長邦雄永世棋聖 vs ボンクラーズ プロ棋士対コンピュータ 将棋電王戦』をニコニコ本社で見てきました。バッチリニコニコ動画に俺の姿が映ってしまっていました(笑)
 結果としては残念ながら米長永世棋聖の負け。米長さんは大好きなのでぜひ勝ってほしかった…ただ、終局後の米長さんの記者会見がかっこよすぎ。やっぱこの人にはカリスマがありますね。局中での映像も様になっていてかっこいい。
 大学時代に強化学習とか少しやっていたこともあり、こういうAIについて思うところがあったのと、米長さんの研究の深さに驚いたので、思ったところを徒然と書きたい。

  • 本譜ハイライト
    • <序盤>
       しょっぱなから面白い展開となる。ボンクラーズの初手7六歩に対する米長永世棋聖の2手目はなんと☖6二玉。負けてしまった前哨戦と同じ手を放った。6二玉は通常見られない手なので、会場が騒然となる。この手について、後の記者会見や渡辺竜王の解説によると、これはボンクラーズの癖を読んで、3筋に飛車を呼び込むための誘いだったようだ。実際は一旦4筋に飛車を振られるが、最終的には3筋に飛車が来ることになる。
       13手目☗6五歩に対する、14手☖同歩に対して、当然☗同飛だと思ったらまさかの☗5八金。これには驚いた。ここで☖6四銀と進める誘惑にかられるが、米長永世棋聖は冷静に☖6三銀右と進める。ココらへんがまだコンピュータなのかなと思ったり。もしここで☖6四銀と進めたらどうなっていたのだろうか。最も、最終的には6四に銀を進めるのだが。。。
       40手目米長永世棋聖が守りを固めるために放った☖6五歩に対して、☗6六歩と咎められるかとおもいきや、☗9五歩。
       ここまでの序盤戦は間違いなく米長永世棋聖が優利。対ボンクラーズの研究は完璧だった。序盤は完全に癖をよみ支配していた
    • <中盤>
       中盤というか、序盤の終わりというか、攻めあぐねるボンクラーズは「一人千日手」と揶揄されるような、飛車の左右往復を繰り返し、ひたすら手渡しを繰り返す。それに対して米長永世棋聖はコマをドンドン盛り上げていった。
       しかし結果としては、ボンクラーズは最善形を崩さないように待っていただけで、対して米長永世棋聖は常に1手進めようとしていた。焦らされて我慢ができなかったと見ることもできた。結果として米長永世棋聖が状況を崩すために3二金を53金まで進めようとしてしまった、さらに7二玉を8三玉に進めて飛車道を止めてしまった。
    • <終盤>
       終盤はボンクラーズが圧巻だった。飛車の左右7筋のT字運動を繰り返すボンクラーズが放った☗6六歩。同歩に対して角が出てきて、米長永世棋聖の☖6五歩に対して角は8筋から5筋へ。この角筋の変更に対して米長永世棋聖は(怒りの)☖3四歩を放つ。この一手により各交換を要求されてしまった。しかしそれを拒否するために無理な守りを強いられることになり、決定打となたように思う。
       米長永世棋聖自身は上記は悪手ではないと、悪かったのは76歩に対する対応だと言っていた。確かにあれが山場だったが、それ以前に他にやれたことがあるような…これ以降、ボンクラーズの怒涛の攻めが出て、109手目あたりからついにノータイムでボンクラーズが打ち始めた。つまりは詰みが見えたということだ。
  • 米長永世棋聖の戦型について
     序盤に構築した陣形は非常に守りに強い形だったが、飛車角が完全に死んでいた。特に角。事実上の角落ちで戦ったに等しく、ボンクラーズの無理攻め待ち or 入玉にかけるという若干ギャンブルだった。
     ☖8三玉について。個人的には☖7三桂からの☖8一飛ではなかったか。個人的には守備側の桂は動かしたくないのだが…あるいは☖7三桂からすぐに飛車を3筋または4筋に振ったほうが良かった気がする。また角を3一角→5三角(→44角)に進められなかったか、あるいは☖4四歩の場面で☖4四金ではどうだったか。
     米長永世棋聖感想戦で最初に述べていた8四歩はぜひ見てみたかった。徹底した防衛作戦は果たしてどれほど有効なのか。リスクを犯して攻めないのは勝つ道だったのだろうか。
  • 記者会見
     記者会見でみた米長永世棋聖は本当にかっこよかった。涙が出そうなほどに。そして米長永世棋聖語録がまた増えた。
    • 本譜の感想を聞かれ
      「(2手目)☖6二玉を奇手と書いた記者がいたが、あれは奇手ではない。」「「6ニ玉」ということに、私の研究では結論が出ました。プレ対局のときに「私が奇を衒った」というようなことを書いた(新聞)社もありますが、どうかそれはやめてほしい。それは6ニ玉という手がかわいそうなのですね。
      これは相当研究したのがわかる発言だった。このあと約300時間研究したこと、いろんな棋士を呼んで(渡辺竜王、田中9段等)検討を重ねたこと、結果として本1冊書ける程に研究を重ねたことが明かされた。米長永世棋聖の執念、そして将棋愛がわかる発言だと思う。
    • (6二玉を奇手と書いた)読売新聞からの「6二玉が最善てである根拠は?」に対して
      あなたのものの考え方ではわからないと思います。」と一刀両断。さらに本1冊書けるといった後に「(主催の)中央公論新社から出ます」と皮肉まで(笑)
      読売(と朝日)の記者の態度がすこぶる悪かったので、米長永世棋聖のバッサバッサ切る発言は気持ちよかった。
    • ボンクラーズと打っていて人間のように感じたかと聞かれ
      大山康晴と打った」「今日は2人の大山康晴が指した」と発言。これはボンクラーズに対する最大の賛辞だろう。
    • 今後のコンピュータ戦について
      「最善手を探すのにコンピュータも人間も関係ない」「神事の探求だ」と発言。
    • コンピュータが人間を超えた後にプロ将棋はどうなるかという質問に対して
      「自動車が生まれて、人間よりも早く走れるようになった。でも人はのろのろと走る駅伝を見て、汗を見て感動する。プロ将棋もそうありたい。尊敬される存在でありたい」と熱弁。これは確かにそうあってほしい、人間の有機的な面白さを見続けたい。その後に「竜王戦読売新聞社名人戦朝日新聞社毎日新聞社のご支援よろしく」と社交辞令も忘れなかった(笑)
  • 米長永世棋聖ボンクラーズ研究について
     さすがというか米長永世棋聖の対ボンクラーズ研究は圧巻だった。ボンクラーズの癖を完璧に見抜き、自分の想定通りの序盤戦を組めたのは賞賛に値すると思います。
     米長永世棋聖の解説を聞いていていつも思うことは、この人は本当に相手の思考をトレースするのがうまい。「自分の最善手では」「客観的に見て」という視点はなく、常に「相手ならば必ずこう打つ」という思考で手を組み立てる。その本領が発揮されたのではないかと思う。
     ただ、あまりにボンクラーズを認め過ぎたがゆえに終盤戦でリスクを取る手を打てなかったことが敗因か。
     さらにいうと、米長永世棋聖は「泥沼流」と称されるように終盤戦で混戦模様にして倒すのが得意とされ、序盤はむしろ苦手と言われていた。ただ、コンピュータは収束に向かう終盤戦に強く、混乱することが無いため、そもそも米長永世棋聖は対コンピュータに向いていなかったようにも思う。久保二冠のような全体の捌きがうまい人や、佐藤九段のような序盤戦に強い人の方が向いている気がする。
  • ボンクラーズの打ち方を見て
     一つ弱点があるとすると、1戦を120手と想定し、持ち時間を単純に割って打つこと。その局面は考えるべき大事な場面か、ノータイムで打つ手かを考えることができない。状況判断をうまくできていないのが気になった。探索木をそれぞれ評価し、それぞれの評価値が発散しすぎているとき等は時間をかけるというアルゴリズムは取り入れられないのだろうか。
     終盤戦の打ち筋は流石だと思った。収束に向かう場面での正確性はすでにプロを超えている可能性があるように思う。
     また、序盤戦はやはり課題がある。一つ非常にポイントだと思ったのは米長永世棋聖が記者会見で述べた「自宅の1分170万手と本戦の1800万手で強さに違いがなかった」という指摘だ。これはどういうことかというと、推測にしかならないが、ボンクラーズは探索木をできるだけ深く評価するが、それをあまりに公平に見て(ざっくり言うと平均値を取って)一手を決めているように思う。人間であればある程度、ありえない手を省いた思考の中の探索木だけで評価しているはずなので、そこに差がある。つまり毎秒何万手を考えると言ってもただただ全ての手を考えるのは、終盤で詰みを見つけるのがどれだけ早くなるかしか意味のない段階になってきたといえるのではないだろうか。むしろ探索木がただただ発散するような局面ではボンクラーズは新たなアルゴリズムが必要になるのではないか。
     中盤でのあの飛車の行き来は、ある意味コンピューターがバグったように見えたが、あれが結局良かったんだろう。自分の最善手は崩さず、相手が悪形になるのをひたすら待つ。人間にはやりづらいけど、コンピューターならできる手と言える。
  • 将棋のソフトウェアについて
     上記のボンクラーズについてのことだけでなく、今後思うこととしては、棋譜だ。今は多くが将棋倶楽部24棋譜を取り込んで評価関数を作っているようだ。ただ、これだと初心者のダメな棋譜もありすぎたり、プロの指し筋が見えない弱点がある。やはりここはプロの棋譜を食べさせなければダメなんじゃないだろうか。更に言うと、流行形にも対応すべく、評価関数的に新しい棋譜に対して荷重させる必要もあると思う。
     更に言うと、本当に既存の棋譜を食べさせなければならないのだろうかという点も気になる。真逆の事を言うが、いっそランダムに打たせまくって、一からソフトウェアに評価関数を作らせると一体どんな囲いや戦略が生まれてくるのかとても気になる。矢倉や美濃囲いを打つようになったのは面白いけど、おもしろくない。
  • 今後のプロ対コンピュータについて
     プロが優利な点としては、「常に実験を実戦で試せること」だ。プロ対プロだと、棋譜を見て正確を見て戦型を予想するのが限界だが、対コンピュータだとただただ起動して試してみることができる。だからかなり正確に序盤戦を組み立てることができる点だ。
     もしコンピュータが相手の癖を見抜くことができるようになると(攻略したい相手と自分の棋譜を食べさせて、評価関数を弄る)、プロが研究用に使う日がくるのも近いのではないか。そうなれば羽生が棋譜管理にコンピュータを取り入れて以来の革命が起きるのではないだろうか。

iOS5.01で完全脱獄してみた

 ついにiOS5.01で紐なしのJailBreakができるようになったとのニュースを受けて、早速JailBreakにトライしてみることにした。ちなみにiPhone4でiOS5.01でやりました。4Sはあと少しでできるようになるらしいです
 この記事ではJailBreak後に入れたソフトや設定を備忘録がわりにメモしていきます。詳細なJailBreakのやり方とかは他のブログに詳細に書いてあるのでリンクを貼って譲ります。

 その前に、JailBreakをやると動作が不安定になったり、最悪壊れる可能性がありその場合Appleのサポートを受けられなくなるのであくまで自己責任でやりましょう。実際、俺の場合も少し重たく感じる瞬間があったり不安定になる瞬間がありました。でもそれを補って有り余るメリットがあると思います。
 JailBreakをやるのはとっても簡単です。Mac/Winに専用ソフトをダウンロードして、起動するだけ。詳細なやり方はJailBreak for Everyoneさんのページを参考にすれば数十分で脱獄できます。

  • JailBreakの後に入れたソフト
    1. SBSettings
      WiFi機内モード等の各種設定をわざわざ設定画面に行かなくても簡単にできるソフト。SBSettingsを入れるとあわせてActivaterというソフトもインストールされます。
       SBSettingsを入れるとNotificationを開いたときにWiFiのON/OFFや機内モードのON/OFF、証明の明るさ等を変更するためのボタンが現れます。一時期URLスキーマを用いたショートカットが話題になりましたが、設定画面を開くのが微妙に重かったり、手順がやっぱり多少かかったりと面倒なので、SBSettingsがやっぱり便利。
       更に一緒にインストールされるActivaterを使うと、例えばステータスバーをダブルクリックするだけでWiFiのON/OFFができたりと更に便利に!
    2. MyWi5.0
       ソフトバンクが認めていないテザリングですが、それを許可してくれるアプリです。正直ソフトバンク網でテザリングしても仕方がないのですが、一ついいのが新幹線に乗った時。ソフトバンクを契約しているとYahoo!BBが無料で使えるので、新幹線に乗っているときにiPhoneWiFiをつなぎ、それをテザリングすればMacからインターネットに抜けられる!これがしたくてテザリングソフトを入れました。設定もとても簡単です。
    3. Five Star Icon
       これを入れると横に5列並べることができます。更にFive Icon Rowsを入れると縦にも5列並べることができます。
    4. AndroidLock XT
       Android風のあのロック解除ができるようになります。これまでパスワードロックが面倒くさくてかけてなかったのですが、Androidタイプのなぞるロック解除であれば手間いらず。個人的にはこれでスライドロックも外れてくれると嬉しかったのですが、残念ながらスライドロックは残るので2段構えになってしまいます。
    5. Zephyr
       ホームボタンがバカになりつつある俺のiPhoneには神のようなアプリ。多分これ、次のiOSにはパクられるんじゃないかなというUIです。有料ですが、これはアツい。
    6. SutterSoundToggle
       カメラの音消しアプリ。SilentPathchという有名な音消しアプリがあったのですが、iOS5に対応していなかったのでこちらをインストール。これをインストールすると、SBSettingsにShutterというトグルが追加され、ここからON/OFFが変更できるようになります。

 こんなところでしょうか。後はSIMロック解除をしてくれるultrasn0wがiOS5のベースバンドである、04.11.08に対応してくれるのを待つのみ!
 で、元々はBB04.11.08に対応してからJBをしようと思っていたんだけど、その頃には多分次のiOSがでちゃうんですよね、でもVersionUPするとBBも上がってしまい、結局いつまでもやれないという悪循環。でもJBをしておくと、BBを維持したままVersionUPできたりもするので、とにかく先にJBをしてしまおうと思った次第です。
 JBをすることのデメリットとして、最初に上げた非サポートがありますが、後あるとすると、iOSの新しいバージョンが出たときにすぐにVersionUPができないぐらいでしょうか。あまりデメリットとは思えないので、やっぱJBすべきですね。

宇宙エレベータはエコの最終手段?

脱原発について

 先日の震災以来、「脱原発だ」「じゃぁ代替となるエネルギー源はどうするんだ?」「自然エネルギーだ」「いやいや不安定すぎるっしょ」「じゃぁ火力発電だ」「いやいや二酸化炭素出しまくりかよ」といった議論がされているが今ひとつ「これだ!」という案はなく、結局は現状の原発は少しの間は維持しつつ、少しづつ自然エネルギーを中心とした代替エネルギーに移行して、出来る限り化石燃料と現世代原発を減らしつつ、足りない分は次世代原発に頼っていくのかななんていう玉虫色の現実案になるんだろうななんて予想される。
 でも次世代原発は現世代原発より安心といいつつも、現在の世論でそれを議論するのは憚れる雰囲気で、しばらくはやっぱり化石燃料に頼らざるを得ないのかななんて思ったりもする。核融合炉が出来れば最高だけど、またそれは数十年先の話。

化石燃料の問題点とその解決法?

 化石燃料が問題なのは2点だと思っていて、ひとつは二酸化炭素を出しまくりなこと、もうひとつはエネルギー転換率が悪くて熱を発するところかなと思っている。で、二酸化炭素を出すこと自体が問題なのではなく、その結果温室効果によって熱がこもることが問題なのだ。
 じゃぁ地球上の熱を放熱できればいいんじゃね?と思ったわけですよ。でもそうは言っても熱いものを宇宙に投げ込むわけにもいかないし、どうしたら良いんだろう?と思ったときに、「宇宙エレベータの宇宙側にでっかい放熱板をつければ熱ポンプになるんじゃね?」という案が思いついた。宇宙エレベータについては[軌道エレベータ - Wikipedia:title=ウィキペディア]か過去記事を見てほしい。いつかこれに乗るのが夢だ。

なぜ宇宙エレベータが解決方法か

 宇宙エレベータを構築するには宇宙側の遠心力と地球側の引力の両方に耐えられるだけの耐久性が必要であり、それには現在のところカーボンナノチューブが最有力視されている。
 ところが、このカーボンナノチューブ。実は熱伝導性にも優れているのだ。したがって、カーボンナノチューブで宇宙エレベータを建造し、宇宙側に放熱板を設置し、宇宙エレベータが夜側の時に放熱板を広げれば、自ずと地球側の熱が宇宙側に上り、宇宙空間に放出されるのではないだろうか?というアイデアが浮かんだ。
 で、そこで更にピンときて、もし昼側にきたときには放熱板の代わりに太陽光発電パネルを広げれば、今度は代替エネルギーとしての自然エネルギー源になれるんじゃないか?なんてアイデアまで思いついた。宇宙側なら天候もクソもなく安定的に発電でき、現在の太陽光発電の弱点まで補える。しかもなんとこのカーボンナノチューブ、電気伝導率にも優れていて送電もしやすいはず。さらにカーボンナノチューブ上に電流を流しっぱにしておけば、電車の要領でリフトの電源にもなるんじゃない?
 なんてこったい、宇宙エレベータを建造して放熱板と太陽光発電パネルを設置したら、エネルギー問題にも一役買うのかい。
 ま、核融合炉と同じく数十年先の話ではあるし、その効力がいかほどかは全く考えてないけどね。でも夢のある話。誰か物理に詳しい人、ツッコミ求む。

「人生万歳!」 "Whatever Works" 2009年 アメリカ

映画『人生万歳』公式サイト
 ウディ・アレン監督が放つ、ウディ・アレンらしいユーモア満載のコメディ。ウディ・アレンはあまり観てこなかったというか、苦手な監督だったが、前作マッチポイントを観て好きになった。
 ウディ・アレンそっくりの主人公を中心とした、ほのぼのコメディ。とにかくオシャレでキュートでバカバカしくてドぎつくてやさしい。
 今月で閉館ということで恵比寿ガーデンシネマで観てきました。良作ミニシアター系を上映してくれた貴重な映画館の最後の公開作品。


 あらすじ
 かつてはノーベル賞候補と言われたボリスだが、今ではボロいアパートでひとりさみしく余生を暮らしている。大学教授の友人たちに向かっていつもの持論を叫びつつ、周りを辟易させる毎日を過ごしていたが、ある日アパートに帰ると汚いナリをした若い少女メロディが飢えを訴えてきた。人嫌いのボリスは断ろうとするが、結局一晩だけ泊めてやることにする。
 しかし、一晩泊まってもメロディは出て行かず居座り続ける。自らを天才と読ぶボリスにとって、南部から当てもなくニューヨークにやってきた若い女の知性の無さは耐え難く、とっとと追いだそうとするが、メロディーは鈍く、ボリスとの観光を楽しむ。メロディはきちんとした身なりになるときれいで、そして明るい少女だった。そしてメロディにとってはボリスが唯一優しくしてくれる人間であり、観光しながらボリスの訳の分からない宇宙の話を聞いているうちに、あろうことかボリスに恋をしてしまう。
 ボリスはこんな初老の男とメロディが結ばれるなんてありえないといいつつも、メロディの美しさと優しさを感じ、一緒に暮らした生活があまりに幸せだったために結婚してしまう。
 二人で過ごした生活はとても楽しかったが、そんなある日、メロディの母親がメロディを見つけ出し家にやってくる。南部丸出しの母親とNYに生まれ育ったボリスの馬が合うワケもなく、さらにメロディに恋する若者があらわれて…
 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 最初のダイナーでオヤジたちが語りだし、とつぜんボリスが画面に向かって「彼ら」と言い出す。仲間はわからないが、ボリスだけが知ってる。「俺らは見られている」と。この始まり方がカッコ良すぎる!
 とにかくオシャレな映画で、何の変哲もないような画なんだけど、いちいちオシャレ。飛び降り自殺のシーンまでかっこいい。
 メロディの母親は教授との愛に目覚めたと思ったら、いつのまにか3人と同棲するというヒッピー的生活になるわ、おやじもまさかゲイに目覚めるわ、挙句の果てにボリスは自殺した際のクッションになった占い師(!)と付き合うわ、もうむちゃくちゃ(笑) 物理学者が占い師と結婚ってのが強烈に笑えた。
 いろんな笑いがあるなかで惜しかったのが、"闇の奥"をそのまま訳したことか。"地獄の黙示録"のカーツ大佐であればみんな意味がわかったのに、なぜか原題のまま訳したから"恐怖だ!恐怖だ!"のみんなが聞いたことのあるはずのセリフがわからずポカーン状態になってしまった。あれおもしろかったのになー。そこが惜しかった。