「人生万歳!」 "Whatever Works" 2009年 アメリカ

映画『人生万歳』公式サイト
 ウディ・アレン監督が放つ、ウディ・アレンらしいユーモア満載のコメディ。ウディ・アレンはあまり観てこなかったというか、苦手な監督だったが、前作マッチポイントを観て好きになった。
 ウディ・アレンそっくりの主人公を中心とした、ほのぼのコメディ。とにかくオシャレでキュートでバカバカしくてドぎつくてやさしい。
 今月で閉館ということで恵比寿ガーデンシネマで観てきました。良作ミニシアター系を上映してくれた貴重な映画館の最後の公開作品。


 あらすじ
 かつてはノーベル賞候補と言われたボリスだが、今ではボロいアパートでひとりさみしく余生を暮らしている。大学教授の友人たちに向かっていつもの持論を叫びつつ、周りを辟易させる毎日を過ごしていたが、ある日アパートに帰ると汚いナリをした若い少女メロディが飢えを訴えてきた。人嫌いのボリスは断ろうとするが、結局一晩だけ泊めてやることにする。
 しかし、一晩泊まってもメロディは出て行かず居座り続ける。自らを天才と読ぶボリスにとって、南部から当てもなくニューヨークにやってきた若い女の知性の無さは耐え難く、とっとと追いだそうとするが、メロディーは鈍く、ボリスとの観光を楽しむ。メロディはきちんとした身なりになるときれいで、そして明るい少女だった。そしてメロディにとってはボリスが唯一優しくしてくれる人間であり、観光しながらボリスの訳の分からない宇宙の話を聞いているうちに、あろうことかボリスに恋をしてしまう。
 ボリスはこんな初老の男とメロディが結ばれるなんてありえないといいつつも、メロディの美しさと優しさを感じ、一緒に暮らした生活があまりに幸せだったために結婚してしまう。
 二人で過ごした生活はとても楽しかったが、そんなある日、メロディの母親がメロディを見つけ出し家にやってくる。南部丸出しの母親とNYに生まれ育ったボリスの馬が合うワケもなく、さらにメロディに恋する若者があらわれて…
 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 最初のダイナーでオヤジたちが語りだし、とつぜんボリスが画面に向かって「彼ら」と言い出す。仲間はわからないが、ボリスだけが知ってる。「俺らは見られている」と。この始まり方がカッコ良すぎる!
 とにかくオシャレな映画で、何の変哲もないような画なんだけど、いちいちオシャレ。飛び降り自殺のシーンまでかっこいい。
 メロディの母親は教授との愛に目覚めたと思ったら、いつのまにか3人と同棲するというヒッピー的生活になるわ、おやじもまさかゲイに目覚めるわ、挙句の果てにボリスは自殺した際のクッションになった占い師(!)と付き合うわ、もうむちゃくちゃ(笑) 物理学者が占い師と結婚ってのが強烈に笑えた。
 いろんな笑いがあるなかで惜しかったのが、"闇の奥"をそのまま訳したことか。"地獄の黙示録"のカーツ大佐であればみんな意味がわかったのに、なぜか原題のまま訳したから"恐怖だ!恐怖だ!"のみんなが聞いたことのあるはずのセリフがわからずポカーン状態になってしまった。あれおもしろかったのになー。そこが惜しかった。