「トレイン・スポッティング」 1996年 イギリス

B0021ZMHNKトレインスポッティング [DVD]
アーヴィン・ウェルシュ
アスミック 2009-06-19

by G-Tools
 「スラムドッグ $ ミリオネア」で一躍一流監督になったダニー・ボイルが有名になった名作である。そしてユアン・マクレガーが有名になった一作でもある。この作品でのユアン・マクレガーは本当にかっこいい。その後の作品は少々いい人すぎて面白くない。これぐらいのワルで不健康なぐらいがいい。
 この映画は高校生の頃に初めて観た作品で、映画好きの友人が熱く語って高校の近くのツタヤで借りて帰った作品だ。そんなシーンすら覚えているほど印象的だったのに、正直最初は面白さを感じられなかった。確かに音楽も、映像もかっこいいけどそれだけだった。ドラッグなんてやったことないヤツにわかる訳ないと思いつつ、その友人だってドラッグなんてやってないのになんで楽しいんだろう?と不思議に思ったものだ。
 でも、いま高校を卒業して10年近くたつけど、すでに5回以上は観ている映画になった。映像も音楽もかっこいい。だからついつい観たくなる。でもそれだけじゃない。この映画はその音楽に合わせてテンポがひたすらいい。無駄が無い映画で、たった90分でこれだけ語れるのが奇跡なぐらいだ。それだけこの映画はいろんなメッセージを発している。人生の喜びってなんなの?我が強けりゃいいの?博識ならいいの?女をたぶらかせればいいの?でっかいテレビを買えたら成功なの?ひたすらヤクを打ってりゃ何にも悩まなくていいの?ビジネスに生きるってかっこいいの?セックスって結局どれほど気持ちいいの?
 この映画はその全ての質問を投げるけど、あくまで回答はお前らが出せと付き放つ。でもその開放感がいい。

 あらすじ
 レントンユアン・マクレガー)はヤク中だ。ヘロインを打てばどんなセックスよりも気持ちがいい。人生はクソで、真面目に働いて家庭を持って大型テレビを買ってはうまいものを食いつつも体脂肪を気にしてダイエットをしつつもうまく行かないから通販でダイエットグッズを買い汗をかくからシャツが汚れてクリーニングに出すけど金がかかるからまた一生懸命働き… 何がその人生たのしいの?ヤク打てばいいじゃない?
 でもヤクを打ってハッピーになりたいのに、友人のベグビー(ロバート・カーライル)やトミーの様なシラフの連中がいちいちバカにしてくる。一大決心を持ってヤクを断とうとするけどヤクを立つ前に最後の一発を…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 本当にひどいことになるんですよね、ラリってハッピーになってる間に、友人のうちの「誰かひとり」の子供を「友人のひとり」が産み、そんなやつらも一緒にラリっているあいだに純粋無垢な赤ちゃんが死んでしまう。
 さらには友人とその彼女のプライベートポルノの勝手に持って帰ったがためにそのカップルは破滅するけど、勝手に持って帰ったことは結局明かさず、さらには落ちるとこまで落ちたいというトミーの願いを金をもらえるというだけで受け入れ、結局その友人はエイズになってネコのせいでクソミソになって死んでしまう。
 それでも本人が言うように、家族の協力によりヤク抜きをされることで更正でき、悪友たちから抜け出して自立しようとする。でもあっけなくベグビーによってもとに戻される。
 そこからがまたかっこいい。ヤクの取引が無事に済み、酒場でベグビーが暴れたときにレントンは決心する。ベグビーは結局友情なんてものはない。孤高の存在"気取り"で中身はない頭空っぽのクソのくせにすべてを見下す。特にヤク中を見下すが、はっきりいってベグビーの方がイカれていると、あのタバコのやりとりでレントンはそう感じる。クソかっこいいスタイリッシュな映像のなかで。
 そして最後の部屋を抜けでるシーン。ベグビーやシック・ボーイが酔いつぶれて全く気付かない中、スパッド(ユエン・ブレムナー)だけがそれに気付く。スパッドは一緒に裁判を受けた仲であり、ベグビーの様に人を見下したりもしないし、シック・ボーイの様に一人よがりでもない、アホではあるが人懐っこく心優しい人間ではある。だからレントンを見逃してくれるだろうと思い、事実見逃す。でもその恩返しとしてお金を渡す。
 レントンはついに、今度こそは自立しようと決心する。いいじゃない、汗臭く働いて泥臭い家庭を持って、どうでもいいようなビンゴに一喜一憂したって。それが人生だもん。いったんどん底を味わったからこそ辿り着く"平凡な毎日"の尊さ。こんな語り方ってあり?ずるいよ。泥臭く生きようって思っちゃったじゃない(笑)