その山の上には…

 友人が神戸に観光に来ていて、今日がその最終日だった。最後に何か観たいというので、緑山という山を案内することにした。緑山の山頂にはモアイ像の様な像があるのだが、その像が非常に大きく、またその山で採れる石ではないので、どうにかして他の山から石を持って来たのだが、それをどうやって持って来たのかわからないという不思議な像なのだ。
 その像を観るべく山道に入っていく。ほとんど整備されていなくて人ひとり歩くのが精一杯なぐらいだった。でも友人たちも、もちろん俺も山登りは久々で、いい天気だったので楽しく歩いていた。そうした時、右手にトンネルが見えて来た。「ここをくぐるのか?」と友人に聞かれるが、「いや、違う。これはこの近くに住む人の生活道だからこのまま、まっすぐ行けばいい」と答えて直進することにした。いま思えばこれが間違いだったのかもしれない。
 直進して行くとだんだん坂がきつくなってくる。足だけでは進めず、手で枝をつかみながらでないと進めないぐらいになって来た。なんせ足場はもろくて砂がさらさらとすべるものだから、しっかり手でつかんでおかないといつ滑るかわからない状況だ。前を歩く友人たちはそれでもすいすい進んでいくのでだんだんと差が開いていたし、後ろから来ているおばさん観光客たちは俺の進みの遅さでつっかえていた。
 そうは言っても「これきつくね?」と思いながらも必至にくらいついていった。枝も頼りないから岩もつかむ。でもその岩もいつボコっともげないか、もげたら下にいる人にぶつかって危ないぞと心配になりながらもしがみつく。
 気がつくと、もはや角度は50%を超えてしまっている。いま手を離したら落ちる。間違いなく落ちる。絶対に道を間違えている。山道ではなくてこれはクライミングの壁だ。これまでのクライミング経験をフルに活かして上って行く、岩のつかみ方、足の置き方…しかしなんせ命綱がないのだ。手を離したら落ちる。落ちたら死ぬ。でもなぜか下からはおばさんたちが喜々として上ってくるし、上を見ると友人たちはすいすい上って行く…
 必至に食らいついても、ついにつかむべき岩が無い。ほとんど左手の岩と左足の岩に全体重を載っけて、右手を精一杯のばして岩を探す。見える範囲には無いからもう手探りで奥を探すがつるっつるで何もない。下へ降りることはもはや不可能。山頂に上って落ち着いて必要に応じて救急ヘリでも呼ばないとどうにもならない。でも何もつかむものが無い。死ぬ…
 というところで、起きました。はい。夢でした。一体なんだったんだ…