「限りなく透明に近いブルー」 1976年

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

 久々に衝撃を受けた小説。村上龍はずっと読みたかったけど、なんとなく読まなかった。多分個人的に村上春樹を敬遠していたから、その隣にいつもある村上龍も避けていたんじゃないだろうか?(笑)
 この小説は、端的に言えば、"トレインスポッティング【廉価2500円版】 [DVD]"×"バタイユマダム・エドワルダ/目玉の話 (光文社古典新訳文庫))"な感じ。どんだけ刺激的なんだよ(笑)麻薬・暴力・乱行…堕落にまみれた若者たちの話だが、1976年にこんな小説があったなんて。もっとも、だからこそ当時の日本文学界に衝撃を与えたのだろうと思うのだけど。
 いつもテレビで見る村上龍に対する見方がかわったなぁ。もともと好きではあったけど、より興味が沸いた。

 あらすじ
 19歳のリュウは恋人のリリーの家でヘロインを打っている。特に日常何をするでもなく、友人のオキナワやヨシヤマやカズオ、レイ子やモコやケイ達とリリーの家でありとあらゆるドラッグを試したり、アメリカ軍基地にいる軍人たちとドラッグをキメて乱行パーティーをしている。
 そんな中、ヨシヤマはケイに別れようと言われ、オキナワはレイ子とケンカし、モコやレイ子は黒人とセックスし…その一方、ドラッグが決まったリュウとリリーはキメたままドライブし…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 ひたすらドラッグとセックスに明け暮れ、明日を考えず、暴力を尽くし続ける若者たち。ヒッピー世代であり、そして戦後のかおりがまだ若干残っている時代の話。
 そんな時代なのに、なぜか俺は共感を覚えてしまった。それは俺がリュウと自分を重ねたからではないだろうか。
 いや、もちろんリュウのようなことをしたわけではないが、俺が中高生のころは、自分で言うのもなんだが"インテリ・ヤンキー"だったのだ。学校の成績はよかったが、態度は悪い。つるむ奴らは不良ばかり。でも俺は半分足を突っ込むだけで、悪いことするのは不良たちで、俺はそれをただただ見つめていた。そんな自分をリュウに重ねてしまった。
 そう、リュウはただただ見つめているだけだった。恐ろしく冷たい視線で。周りの人間たちがバカをして、ケガをして、ケガをさせて、ケンカしている様をただただ、100M先からぼーっと見つめているだけだった。リュウは、彼らからは頭がいい人間であり、どことなく、"この位置にずっといる人間ではない"として、ある意味で認められていたがゆえに、いつも一緒にいるが、双方が一線を引いていた。
 そんなリュウはしかし、明日が見えない。何かに不安を書きたてられている。明日に立ち向かえず、目の前にある現実を傍観している。その冷めた目線が読んでいる俺たちにまで伝わっている。血は熱く、精液は熱く、仲間達の感情も熱い、しかしリュウだけが氷のように冷めている。
 幻覚と夢と現実のトライアングルをぐるぐると回って、何が何だかわからない様が読んでる人間をドラッグをキメているかのような感覚に陥れるとんでもない作品だと思う。