「レクイエム・フォー・ドリーム」 2000年 アメリカ 

 さて、「赤ひげ」、「生きる」と黒澤映画ばかり続いていたので、ここでお気に入りの洋画について書いてみたいと思います。

 この映画、画像をご覧いただいた通り、非常に惹きつけられるパッケージですよね。この映画は僕がレンタルビデオ店でアルバイトしているときに、あまりにかっこいいパッケージだったので借りた、という前情報無しで観た映画なんですね。しかし、こんなに衝撃を受けるとは思わなかったですね…

 この映画、本当に救われません。全くです。ヘコみ度No,1と言っても良いでしょう。簡単に言うならばドラッグ映画。はいー、そこで皆さん"ありがちな映画"とか言わない!全然違うから!とりあえずあらすじから…

 あらすじ
 20代の青年ハリー(ジャレッド・レト)はいつも母親サラ(エレン・バースティン)のテレビなどを盗んでは売り飛ばし麻薬を手にするジャンキー。しかし、たった一人の息子がかわいいサラは怒ろうともせず、黙って質屋からテレビを買い戻す。
 ハリーは恋人とその恋人マリオン(ジェニファー・コネリー)、そして青年の友達の黒人タイロン(マーロン・ウェイアンズ)と麻薬に溺れた自堕落な生活を送っている。そして、そのうち自分で麻薬をサバこうと考え出す。
 一方、サラは、夫を先に亡くし、ハリーは家にあまりいないために一人で寂しい。そんな彼女の楽しみはマンション前での近所のおばさんたちとの集い、そして、毎回楽しみにしているTVショー。あるとき、とのTVショーから出演の当選はがきが届く。サラは近所のおばさんたちの間で評判になる。喜んで当日のドレスの試着をするが、どうしても太っていて入らない。ダイエットしようとするが、うまくいかない。そのとき近所のおばさんから"ダイエット・ピル"の話を聞き、試してみる。するとうまくいき、常用するようになる。それが麻薬とは知らずに…
 そこから彼らのレクイエム・フォー・ドリーム(夢への鎮魂歌)が始まる…

 <ここからネタバレ!!>

 さて、もうあらすじを読むだけでお分かりかと思いますが、ほんと救われません。てか救いようがありません。しかし、最初の3人、つまり青年と恋人と黒人は、ありがちな、自業自得のことなんですよね。自分でまいた種であり、そんな素人考えがずーっとうまくいくわけないんです。
 しかし、それに対する母親の境遇。これがほんとに救われない。この映画は4人の"夢"から始まります。青年と恋人は2人で幸せな人生を送る、そのための金が欲しい、黒人も一旗上げてやるという思いがある。でも、母親の夢だけはほんとにささいで、かわいそうなんです。母親はもう夫を亡くしている、そして息子は帰ってこない、そして自分には趣味も自慢になるようなこともない。そんなときに、近所のおばさんも見るTVショーに出るチャンスが来るんですね。ホントにささい。ちょっと間、近所で評判になりたい、自慢できる思い出が欲しいだけなんです。しかし、無常にもこの母親に悪夢が降りかかります。この母親を演じているエレン・バースティンがホントに好演しています。観てるこっちがかわいそうになるぐらい。
 青年たち3人は、ほんとに考えが甘い。最初はサバいたお金でドンちゃん騒ぎ、仕入れたヤクでパーティーするぐらいの余裕なんですね。でも仕入先がヤクを仕入れられなくなると、さぁ大変。自身もヤク中だし、お金もたまらない、そして危険な仕入れ旅行にでかけざるを得なくなる。そして最終的に3人はどん底に落ちてしまいます。とくに、恋人、最後まで青年の帰りを待ちますが、青年は捕まってしまう、青年の悲痛な電話を聞きますが、そのとき恋人は待ちきれずに娼婦にまで成り下がってしまう。この娼婦のシーンがエゲツない、なんとレズのアナルファックを見せるってなもんなんですね。ホントにいやらしい!こんなシーンありなのか!?ってなぐらいです。このシーンも必見!
 いやー、救われない。観てるこっちの精神状態最悪ですよ。いやー、おもしろい!←おい!
 そして特筆すべきはこの映画の監督!ダーレン・アロノフスキーです!この映画はそのストーリーもさることながら、映像と音楽も非常に高く評価されました。彼は第1作の「π」でも非常に高い評価を受けました。ちなみにこのレクイエム・フォー・ドリームは第2作にあたります。映像では青年たちがドラッグを摂取するときの効果、"ヒップ・ホップ・モンタージュ"とかいう、彼の編み出した効果らしいですが、これが効果的!だんだんとこのシーンが出てくる間隔が短くなってくるあたりが、ジャンキー度を感じさせます。また、母親が幻覚に悩まされるシーン。ほんと狂っちまった感バクハツです。音楽では特に最後の音楽。まさにレクイエムというような重圧と悲しみのある音楽です。まじでかっこいい。
 この映画は凹みます!これは保障します。でも、ドラッグムービーが好きな人、特によくある話に飽きた人にお薦めです。もちろん、これのもっているメッセージというか、"夢が破れて絶望に落ちる"という点で非常に面白いので、ドラッグムービーが嫌いな人でも楽しめると思いますよ!!!