「その土曜日、7時58分」 2007年 アメリカ

B0026R9HM2その土曜日、7時58分 コレクターズ・エディション [DVD]
フィリップ・シーモア・ホフマン, イーサン・ホーク, マリサ・トメイ, アルバート・フィニー, シドニー・ルメット
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2009-07-03

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 主演は、「カポーティ」でアカデミー主演男優賞を取ったフィリップ・シーモア・ホフマン、その弟役に「恋人までの距離(ディスタンス)」ビフォア・サンセット」のイーサン・ホーク、さらに監督が「十二人の怒れる男」「狼たちの午後」のシドニー・ルメットと、そうそうたるメンバーで作られた映画である。
 映画は、「メメント」「フォロウィング」「パルプフィクション」の様に時間列をざっくざっくに切って、入れ替える手法を使っていて、観客に対して、主人公達と同様にパニックを効果的に与えている。
 また、ストーリーとしては「リプリー」の様な追いつめられる絶望と、コーエン兄弟の様なたった一つの誤算から広がる重大な結末という滑稽さが含まれている。つまり脚本からストーリー、役者や監督に至るまでおよそ映画を構成する主要な要素に対して、すべて高いレベルで撮られた映画なのだ。

 あらすじ
 土曜日の朝、二人の男が宝石店の前に車を止めていた。二人は宝石店を強盗することを計画しており、宝石店の店員が店を開けるとともに、計画を実行に移した。ところが強盗の一人と、店員が撃ち合いになり、返り討ちにあってしまう。もう一人の強盗は、車を出して逃げ出す。「アンディのくそ野郎!」
 アンディ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は一見社会で成功したように見える。金も持っているし、地位もあり、美しい妻を持っている。ところがその裏ではドラッグに怯え、会社の金を横領していた。一方、その弟ハンク(イーサン・ホーク)は離婚した妻への慰謝料もろくに払えず窮地にいた。そんなハンクに対して、アンディは強盗を持ちかける。しかも相手は二人の両親が営む宝石店だった。
 「なに、簡単さ、宝石には保険がかかっている。強盗をしたって損はでないさ」
 ところが、計画は失敗し…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 計画が失敗してからというもの、アンディとハンクの二人は転げ落ちていってしまう。アンディは会社の金の使い込みがばれそうになり、ハンクはボブの嫁と嫁の兄から恐喝される。さらに父親チャールズがボブの出身地に疑問を抱き、事件を自ら解決しようとする。そしてチャールズの宝石商としての勘から、盗品を闇市場に流す宝石商を訪れたところで、アンディがかんでいることを知る。
 この事件は、ハンクがへまをしたことからすべてが台無しになったように見えるが、実はもっと前提であった、家族愛のなさが原因となっている。アンディ達の家族は、母親がハブとなってぎりぎりつながっているだけで、残りの3人の間に家族愛がなかったのだ。だから、アンディはチャールズの資産である宝石店を襲うことを考えついたのであり、母が死んだときのアンディの「父親だったらよかったのに」という発言につながって行くのである。チャールズは、母親を失ったとき、アンディとの確執を取り払うことの必要性を感じる。これまでは母がいたから、直接チャールズとアンディらがつながる必要がなかったが、母がいなくなった今、チャールズ自身がハブになる必要があると感じたのだ。しかし、それも不発に終わり、ラストの絶望が確定する。
 この映画では、チャールズがいい味を出している。この人の演技力はヤバいね。最後のアンディを殺すシーンのあの目!あの目だけで、恐怖を感じますね。
 というわけでいい映画だった!