「モ’ベター・ブルース」 1990年 アメリカ

B002DYXYZOモ’・ベター・ブルース
ジェネオン・ユニバーサル 2009-09-02

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 「モ’・ベター・ブルース [DVD]」。以前、ブラックムービーにはまりまくっていた時に観た映画。スパイク・リーの映画を観あさっていたときに1度だけ観た映画だった。いい映画だけど、そこまで好きとは思わなかった。やっぱ一番好きなのは「ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]」とかが印象に残っていた。
 でも安売りをしていたのでamazonで購入して観てみると、これってすんばらしい映画だった!「25時 スペシャル・エディション [DVD]」も「クロッカーズ [DVD]」も好きだけど、やっぱこの映画ははずせない。2度目、3度目と観ていくたびに新しい発見・新しい喜びを与える映画は本物だ。
 ちなみにこの映画は、クリント・イーストウッドが「バード [DVD]」を撮ったのに対抗して作られたとも言われている。なぜならクリント・イーストウッドはこの映画でを撮ったときに「オレには黒人の血が流れている」と言って、自分はブラック・カルチャー・フリークであることをアピールしたために、スパイク・リーがブチ切れたといわれている。。スパイク・リーらしい行動だ。でも確かに「モ’ベター・ブルース」の方が百倍いい。(でも「バード [DVD]」に出てるフォレスト・ウィティカーは大好き)

 あらすじ
 小さいころから、友達とも遊べずトランペットの練習を両親から強要されていたブリーク(デンゼル・ワシントン)。その甲斐あってか、若くしてブリークは、ジャズ・シーンの新しいスターとして自らのバンドを率いるようになる。しかし、そのせいか自分の才能に酔いしれ、周りに耳を貸さなくなってしまった。
 親友でありバンド仲間でもあるシャドウ(ウェズリー・スナイプス)は出世欲が強く、また彼も自分の才能に自信があったため、ブリークと衝突を繰り返していた。
 ブリークにはインディゴ(ジョイ・リー ※スパイク・リーの兄妹)とクラークという2人の恋人がいるが、ブリークのどっちつかずの態度に愛想をつかされる。また幼馴染であり、ブリークのバンド・マネジャーでもあるジャイアント(スパイク・リー)は仕事ができず、周りにバカにされ続けている、そんなジャイアントをブリークは必死に守りジャイアントのギャンブル癖など私生活のダメ具合も世話をやいてあげていた。
 そんな不協和音が最大になったときにある事件が起きて…

 <ここからネタバレ!!>
 これって、始めてみたときはただのミュージック・ムービーとして観ていた。でもそんなもんじゃない。これこそスパイク・リーが描きたかった黒人の人生じゃないかと思った。「ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]」は黒人の身勝手な性質を、そして「モ’・ベター・ブルース [DVD]」は黒人の輝ける才能と、多くの才能ある黒人がたどる悲劇を描いたんじゃないかと思う。ただし、多くの黒人が、その豊かな才能の対価として巨万の富を得たにもかかわらず、その富を無駄に散財して悲劇的な死を遂げたのと対照的に、この映画ではその悲劇を救済し、才能こそ失うものの黒人の文化的で豊かな人生を描いたと思う。
 スパイク・リーは黒人のパワーやすばらしい感性を誇りに思っている。そしてそれが評価されていないことに、しかも黒人こそがそのすばらしさに気づいていないことを嘆いている。これはこの映画の中でも語られている。
 スパイク・リーの映画はその黒人の文化を認めさせようと映画を撮っているが、それがときにうざったらしく見える映画も多い(時には黒人の愚かさを描いているものもある。クロッカーズ [DVD]とかドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]とか。)。でもそれも黒人に警鐘を鳴らす意味がある。スパイク・リーが描く映画ってのは観るたびにその意味がわかってくるなぁ、と思う最近だ。
 デンゼル・ワシントンウェズリー・スナイプスは実は嫌いな俳優なんだけど、この映画は本当に2人とも輝いている。この2人は最初は輝いていたんだけど、最近はめっきりいい映画にでなくなっちゃったなぁ。ホントもったいない。とくにデンゼル・ワシントン。あのアカデミー主演男優賞をとった「トレーニング デイ (HD-DVD) [HD DVD]」なんてクソもいいところだったね。ってかあれって主演ですらないじゃん!!!!って感じだ…やっぱり才能ってのは若いうちに尽きることが多いのか…