「パブリック・エネミーズ」2009年 アメリカ

パブリック・エネミーズ公式サイト
 「ヒート」でロバート・デ・ニーロアル・パチーノの両大役者を使いこなし、激しい戦闘シーンで観客を興奮させたマイケル・マン監督が、ジョニー・デップクリスチャン・ベイルで再びギャング物を撮ったのが本作だ。
 実在のアメリカ人で、数々の銀行強盗を行い社会の敵「パブリック・エネミーズ」と言われたジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)とその恋人ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)、そしてそのジョン・デリンジャーを追いかける警察のメルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)をそれぞれの演者が熱演している。そしてマイケル・マンらしく戦闘シーンはとにかく激しく、生々しい。グロがダメならやめた方がいいかもってぐらい。
 バイオレンスと危険な恋というのは使い古されたテーマかもしれないが、その二つがとことん激しく、キレイであれば今でも十分に活きるテーマであるということがこの映画で証明されている。


 あらすじ
 ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は銀行強盗を専門に働くギャングだ。銀行強盗であれば、市民はあまり非難しない。みんな銀行に苦しめられているから、その銀行が苦しめられることに同情ができないからだ。逆に誘拐のように市民が直接被害を受け、非難を受けるものは絶対にやらない。だからジョン・デリンジャーは「パブリック・エネミー」と言われながらも、市民からは逆に英雄視すらされていた。
 そんなジョン・デリンジャーはあるクラブで美しい女性、ビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に出会う。負担はただのクローク係に過ぎないビリーに対して、ジョンは積極的にアプローチし、高価なプレゼントを渡してついに恋に落ちる。でもビリーは心配でならない。ジョンは今でこそ金持ちで面白く魅力的な人間ではあるが、あくまで犯罪者であり、いつかは捕まるか殺されるかの人間だ。でもそんなビリーに対してジョンは「俺は死なない。俺は一流の銀行強盗であり、欲しいものをすべて手に入れる」という。
 一方、一向にジョン・デリンジャー一味を捕まえられない警察は、すべてのプライドをかけてデリンジャー逮捕を目指す。デリンジャーの縄張りであるシカゴに、若手の実力派メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)を起用し、徹底的なデリンジャー包囲網をまく。
 ところが、ジョンはひょんなことからあっけなく捕まってしまい、ジョンとビリーは離れ離れになってしまうが愛が途切れることはなく…
 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 とにかく、デリンジャーの強盗シーンがカッコいい。まるで怪盗二十面相のように華麗に舞う。デリンジャーは銀行でこそ華やぐのだ。
 逆にメルヴィンはどうしても泥臭く、面白みはない。クリスチャン・ベイルはいつもこんな良い人の役ばかり演じている。むしろマシニストの時のようにちょっとおかしな役をやった方がいいと思うのだが…今のままではトム・クルーズ的ポジションに収まってしまいそうで怖い。
 ビリー・フレシェットを演じるマリオン・コティヤールは本当に良かったですね。あの拷問を受けるシーンはとにかく迫真の演技だった。さすがアカデミー賞女優だ。
 この映画はでる人みんながいい演技をしていて、飽きが全くこない。ネルソン役も好きだし、弁護士役も良かった。あの警察の長官役も良かった。
 でもストーリーとしてはある意味「寅さん」的でいつもどおりっちゃぁいつも通りだけど、そこをつくのは野暮ってものか。どうしても悪役が好きになるタイプなので、ヒートにしろ本作にしろ、最後に正義が勝のが嫌いなのだ。