「フェルマーの最終定理」を読んで

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

 あんそく やる夫で学ぶフェルマーの最終定理 【前編】を読んで、あまりに面白かったので、その参考とされた本書を読んでみた。
 さんざんいろんなところで言われていることではあるが、著者のサイモン・シンの文才、というか構成力、読ませ方、話の進め方、わかりやすさ、すべてが完璧で、450ページ超という長編にも関わらず、全く長いと感じさせなかった。それどころか、まだまだ読みたい!とすら感じさせる才能に驚いた。
 数学の難問に関する本を読むのは好きで、これまでもリーマン予想の本や、ポアンカレ予想の本やらを読んだが、本書は特に面白い。ただ単位ワイルズに焦点を当てた本ではなく、ガウスオイラーガロアにコーシーと数々の名数学者達が登場する壮大な数学史文学なのだ。
 また、日本人に取って本書は関わりが深い。フェルマーの最終定理に関わる日本人数学者が多いからだ。特にフェルマーの最終定理を解くにあたって、最後の難関となった谷山・志村予想の谷山豊・志村五郎のコンビ愛には泣かされる。特に最後の志村五郎の「だから言ったでしょう?」という言葉では目頭が熱くなる。
 正直、ワイルズ自身はあまり好きではない(すべてを独り占めしようとする姿勢のせいかな?)が、それでも最後の証明の瞬間は感動せざるを得ない。数々の数学者達の歩みをワイルズ自らの天才的なひらめきによって構築された証明。それに感動しないわけがない。