「地球の長い午後」 1962年 米国?英国?

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

 異形の星。いや、異形の世界となった遠い未来の地球の話。そこは、地球が自転をやめ、永遠の昼の世界と永遠の夜の世界に分かれた星。永遠の昼の世界では植物がありったけの成長をし、さまざまな進化を遂げて動物を駆逐し、月までのびるものや空を飛ぶもの、ほかの植物を補食するものとさまざまだ。
 そんな世界では動物はなりを潜め、人間達もサイズを小さく、植物達に怯えながら細々と暮らして行く。そんな中で一人の人間がひょんなことから大冒険をする…
 いったい、何をどうすればこんな世界を想像できるのか?作者の創った世界を、自分の想像力をフル回転させて必死に追いつこうともがきながら読んだ名作である。

 あらすじ
 女のリリヨーは、群れの長である。長の役目は群れを統制し、希少な男子を守りながら子孫を残すことだ。しかし、頭脳が明晰ながらすこしひねくれた男子のグレンはいつもリリヨーを困らせていた。
 リリヨーは自分の老いを感じ、女の子のトイに自分の後を継がせ、自らの命を絶つ。トイは残された幼い人間達をまとめようとするが、グレンの反発にあい、ついにグレンを追放する。
 この世界でちっぽけな人間が一人追放されることは死を意味する。グレンは追放されてすぐに、キノコのアミガサダケに取り憑かれ自由を失うが、その代わりに遥か昔の人間の知識を取り戻し、数奇な運命を辿る…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 いやぁ、いったい何を食えばこんな生命達を、シチュエーションを、ストーリーを考えられるのだろうか?(笑)ただただ、圧倒されっぱなしの1冊だった。
 しかしね、ポンポンかわいいよポンポン(笑)なんて愚鈍で純粋なのか。一番いいキャラしていたなぁ。
 この本のメッセージは何だろう?グレンの知識欲、それは人間の英知。そしてヤトマーの慈愛、それは人間の美学。この二つをもって人間を高らかに賛美したというところだろうか。しかしグレンはアミガサダケに取り憑かれ、やっと解放されたと思うと、今度はソーダム・イーに取り憑かれそうになる。ソーダム・イーを担ぐ瞬間は読んでいる方もドキドキだよね。
 最初はその世界観に追いつけず、若干苦痛だったが、この世界に慣れてくるとなんと面白いことか。ストーリー的には何度か山場はあるが、トンガリが出てきて、ソーダム・イーが出てきたあたりから俄然面白くなってくるね。そして、ラスト。ついにグレンは遥か昔の人間並みに強い精神を手に入れて、そして自ら人生を切り開こうとする。この最後が格好良すぎて感動したなぁ。
 こういった自然をモチーフにしたSFは読んだことがなかったので、新鮮だった!めちゃくちゃ面白かった1冊だった。