「マッチポイント」 2005年 イギリス
マッチポイント 初回限定版 (特別ブックレット付) [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
- 発売日: 2007/02/02
- メディア: DVD
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しかし、Dから熱烈に観てくれといわれたので観てみると…すいません。僕の判断が間違えていました。これは面白い!
主演はジョナサン・リース=マイヤーズ(ベルベット・ゴールドマインの主役。どっかで観たことあると思ったら)、そしてヒロインはスカーレット・ヨハンソン!!
スカーレット・ヨハンソンはこの役にはまってましたね。劇中でも言うように、彼女は美人というよりセクシーなんですよね。
この映画は、おもしろい。でも残念なのは題名とパッケージ。「マッチポイント」であのポスターじゃ、甘ったるいラブストーリーだと思っちゃいますよ(笑)でも、これはラブストーリーじゃない。観て損はない映画ですよ。
あらすじ
クリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、プロ・テニスプレーヤーをあきらめ、テニス・コーチになろうとロンドンにやってくる。そのうち、大富豪の息子トムを教えるうちに仲が良くなり、トムの家族達とつきあうようになる。そのときトムの妹クロエがクリスを好きになる。
クリスとクロエはお互いが引かれ合うが、ある日トムのパーティーに呼ばれたとき、一人の美しい女性ノーラに会う。クリスは思わずノーラに近寄るが、ノーラはトムのフィアンセだった。
しばらくして、クリスとクロエは結婚する。その後トムとノーラは順調にいっているように思っていたが、突然トムとノーラは別れ、トムは別の女性と結婚してしまう。ノーラのことを忘れ、クロエと幸せに過ごしていたクリスだが、町中でばったりノーラと会い…
<ここからネタバレの可能性あり!!>。
この映画を見終わったとき、Dが熱烈に薦めてきた理由がわかった。この映画って、ポール・オースターなんですよ。偶然の妙。その偶然の妙具合が絶妙なんです。コーエン兄弟のようなバカバカしさというか滑稽さではなく、ポール・オースター的な数奇さなんです。俺とDが大学時代にはまったポール・オースターなんです。
この映画を観ている間の重圧感はリプリー [DVD]にも通じるなぁと。嘘を塗り固めて行くことで泥沼に陥り、嘘をつくしかないのに、その嘘で自分が潰されて行く感…誰もが一度ははまってしまう、デフレスパイラル…それをぎりぎりの寸止めで魅せるうまさがこの映画の脚本にありましたね。
最初からクリスはノーラを愛していた。それはノーラが言う通り、夢中にさせる愛欲だった。でも自分の野望をかなえるクロエを手放すことができない。クロエはそこそこ美しく、自分に尽くしてくれた。でも、結婚してからは子供、子供、妊娠、妊娠…こんな女に欲情しろと言う方が無理な話だ。
ノーラはセクシーで、クリスの身分と近いから感性も近い。クリスは結局、一気に上りすぎたのかも知れない。身分不相応な社会的地位を手に入れてしまい、愛しきれない女と一緒にいなければいけないなかで、ノーラは魅力的すぎたのだ。でもノーラも夢に破れ、何度も裏切られた経験を持つために、クリスだけは手放せなかった。でもクリスは野望を捨てきれない。そして愛情は憎悪に変わってしまう…
ってね、ここまでならばある意味よくある話なんですよ。ノーラを殺し、あの指輪を投げたとき、指輪が手前に落ちてしまう。最初のシーンでテニスボールがどちらに落ちるか、それが運命だと、クリスも持論として運は大事だと、こんなけわかりやすい伏線を張られれば、この瞬間にクリスは破滅に陥ると思いますよね。
ところがそうはいかない。指輪が手前に落ちたために、アホなジャンキーが手に入れてしまう。警察がクリスが犯人だと睨んだ瞬間にそのジャンキーが捕まり、クリスは容疑者から完全に離れてしまう…
なんというラッキーか…でも、”ラッキー”なのだろうか。クリスは最愛の女ノーラを自らの手で殺し、ついに幻覚を見る。そしてクリスは”罪を償う価値があるなら償いたい”と独白する。
しかし、クリスはそのチャンスを逸した。正直、ノーラを殺した瞬間にクリスは地獄に堕ちたのだ。捕まって罪を償っても、地位もノーラも戻らない。捕まらなかったとて愛してもいない女と望んでもいない子供と生活をし、一生罪を背負わなければならない。どちらが地獄なのか。どちらも地獄としか思えない。いったい幸せなのか、なんなのか…
最後でいろいろと考えさせられるいい映画だった。ウディ・アレンが正直苦手で、70・80年代の監督でその時代しか輝かない人かと思っていたが、なんのなんのすばらしい監督じゃないかと見直させられた映画でした。良質のサスペンス・ラブストーリーです。
PS.ただね、この映画は確かにサスペンスですよ。でもね、ひかりTVさん。この映画をサスペンスに分類してはネタバレってもんですよ。この分類のせいで面白さ30%Offですよ!嘘でもいいからラブストーリーに分類してほしかったです…