「ショートバス」 2005年 アメリカ

 ついに、俺の大好きな「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェルの新作がでました。その名も「ショートバス」。前回のドラッグクイーンもちゃんと出てくるけど、今回の主役は7人の男女。そう、群集劇です。
 特に主演となっているのが、「ヘドウィグ」でチョイ役で出ていたスックイン・リーです。
 で、この映画のプロモーションでよく言われるのが「約100箇所にわたるぼかし入り」ということ(笑)あのね。確かにこれはぼかしなしではとんでもなくなるわ(笑)
 でも、この映画は決してエロスでも、ましてやエロではない。ただ、人を描く上で必要なモノをストレートに描いた結果、モロに映ってしまっただけなのだ。だから、ジョン・キャメロン・ミッチェルも言っているが、日本で公開をするにあたって、モザイクを入れるのは本望ではなかったと。確かにモザイクなしで観たかった!でも、アレではしょうがない(笑)しょっぱなから飛ばしすぎだし(笑)
 でも、ハートウォーミングでジョン・キャメロン・ミッチェルのメッセージもストレートで、またこの監督は「ヘドウィグ」から一貫してるんだなーというところに好感を持ったり。
 一つのメッセージをいろいろな形で伝えられることはすばらしいことです。

 あらすじ
 恋愛カウンセラーとして働くソフィア(スックイン・リー)は"セックスカウンセラーとしてもベテランよ"と豪語する。しかし、実はソフィアは夫はもちろんこれまでのセックスでイッたことが無いという悩みをもつ。
 そんな彼女の元にジェイミーとジェイムズというゲイのカップルがやってくる。彼らの悩みを聞いているときに、「ショートバス」というサロンに誘われる。
 誘われるがままに「ショートバス」に行ってみると、そこは人々がありのままの姿でありのままセックスし、語り合いう場だった。
 そこで彼女はさまざまな悩みを持つ男女と語り合い、その中でも普段は女王さまとして過ごすセヴェリンと親しくなり、その一方でジェイミーとジェイムズは2人の関係に新しい風を取り込もうとして…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 この映画は本当に後味がいい。前作のヘドウィグはガッツンガッツンと身に迫ってくるのに対して、近作はあくまで雰囲気を感じさせる感じ。
 こんな感想を抱くのは不思議だ。なぜならワンシーンワンシーンは濃厚なセックスシーンであり、変態シーンであり、自殺シーンでありと、キツイシーンのオンパレードである。
 にもかかわらずこの観賞後感。これはあのポップな雰囲気の演出であり、スックイン・リーの暖かさであり、あのサロンの主人であり、あの音楽であり、そして何よりもそれらを起用したジョン・キャメロン・ミッチェルのなせる技なんだろう。
 ジョン・キャメロン・ミッチェルは前回・今回と「ありのままの自分でいいよ、自分が他と違うからといって悩むこと無いんだよ、そのままありのままの自分が素敵なんだよ」というメッセージを送ってきた。きっとこのメッセージは彼(彼女?)の人生観・哲学なんだと思う。
 だから、彼(彼女?)の映画を観るとホッとする。どんなに辛い状況でもホッとする。観ると元気が出てくるんだなと。
 ますます、ジョン・キャメロン・ミッチェルから目が離せなくなりました。