1200万円

「1200万円。君にあげるよ。お小遣いだ。」
「え”、いっせんにひゃくまんえんですか?」

 それはお昼過ぎのこと、突然上司から言われた言葉だ。もちろん本当に1200万円を貰える訳ではなく、契約相手との価格交渉のためのお金だ。来月から契約更改となる交渉を入社して3ヶ月の僕に任せるというのだ。正直1200万円と言うのはきつい金額で、向こうの言い分では1700万は超える案件だったが、どうにか1200万円に抑えたいというのがこちらの思いなのだ。しかも1200万円といっても、これは1ヶ月あたりで、3ヶ月契約なので実際は3600万円〜5100万円という大きな幅を持った契約交渉だった。
 かなりきつい条件ではあったけれども、これをクリアできればかなり大きい成果になると思った僕は相手に電話をした。その後1時間半は軽く越える交渉を続けたけれども、やはり最後の100万円が詰まらない。そらそうだ、1700万でトントンのものをどうして1200万に出来ようか…でも、なんとかしたいと言う気持ちで粘るがタイムアップ。纏め上げることができなかった。
 もちろんそんなことは上司も承知で、まとまるとは思ってなかったが、マジで悔しい。出来ないと思われたことを出来ればどれだけ大きいか。取り逃した魚は大きい…