「キャピタリズム」 2009年 アメリカ

キャピタリズム公式サイト
 「ボウリング・フォー・コロンバイン」で有名なマイケル・ムーア監督の最新作「キャピタリズム」。これまでは銃社会イラク戦争、医療問題など、アメリカの様々な問題を扱ってきた。本作では題名どおり「資本主義:キャピタリズム」をターゲットに、サブプライムローン問題に揺れるウォール街に切り込む。
 資本主義によって豊になったアメリカ。しかしごく一部の資本家がアメリカを動かし、ノーリスク・ハイリターンで巨万の富を得ている。資本主義が悪用され、強欲さによって盲目になり、アメリカは間違った方向に進んでしまったとマイケル・ムーアは主張する。
 少なくとも、貧困に喘ぐ労働者が家を失い、苦しんでいる一方で銀行は国から金を貰って救われ、銀行員は相変わらず巨額のボーナスを得ているという事実。
 マイケル・ムーアらしい痛快なドキュメンタリー!最後まで見逃せない。


 あらすじ
 労働者はうなだれている。ローンを払えなくなった人々は警察によって、強引にドアを蹴破られ追い出されようとしている。
 金融会社は自らがリスクも把握できない得体の知れないデリバティブ取引に投資し、それが破綻したら国に金を求める。国から救済された身分なのにも関わらず、しっかりとボーナスは貰い、相変わらず貧しい労働者に対して金を貸さず、ローン回収を急ぎ、家から追い出すことを厭わない。さらには追い出した家をもとに転売し、さらに儲けようとしている。
 資本主義はおかしい、というと社会主義者と思われるかもしれない。資本主義に代わるものは何か?と聞かれることもある。しかし企業によってはうまく次の主義を体現しているところもある。とある会社にはCEOがいない。すべての従業員は同じ給料で、すべての決定権は会社員全員で決める。従来の経営陣と労働者という境目はない。そういう企業から「リストラ」なんて選択肢がでるわけがない。
 今のルールはそのまま続くのか?民主党の議員の中には貧困の中にいる労働者を助けようとするものもいる…
 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 マイケル・ムーア自身が、フリントという労働者の街で育ち、そしてそのフリントがリストラの嵐で無残なゴーストタウンになってしまった経験を持っている。それがブッシュ政権によって、そしてブッシュと同じ強欲な金融企業のせいで第2第3のフリントが生まれようとしている。そんな状況にマイケル・ムーアが黙っていられるワケがない。「ロジャー&ミー」以降、ずっとマイケル・ムーアの映画は同じ根っこから育っていった一本の映画なんだなぁとこの映画を見た最初の感想だ。
 でも、アメリカが強いのはそうした状況に陥った時に跳ね返すだけのパワーを持っていること、変革を実行できることだ。家を失った家族を助けるために立ち上がった地元の住民たちは銀行による立ち退きを追い払った。退職金も給与も払われずに追い出されそうになた従業員たちは、工場に立てこもり、自分たちの当たり前の権利を確保した。
 そして、ブッシュは退場し、労働者よりである民主党が政権を取った。そして家を追い出されそうになった人々へ向けて民主党議員が言い放った「不法占拠しなさい!」というメッセージ!日本じゃこんなこと絶対に言えない。ここにアメリカのパワーを感じた。彼らは代わることを恐れない。彼らは自らのためにきっちりと立ち上がる。