「レスラー」 2009年 アメリカ

B002UQVESYレスラー [DVD]
日活 2010-01-15

by G-Tools

 俺の大好きな「レクイエム・フォー・ドリーム」の監督ダーレン・アロノフスキーミッキー・ロークを主演に迎えての映画。
 プロレスには興味が無かったのですが、それでも是非観てほしい。こんなにプロレスって激しいのかよ、こんなにかっこいいのかよというシーンが目白押し。「π」や「レクイエム・フォー・ドリーム」でその映像が絶賛されたダーレン・アロノフスキーだからこそ撮れる作品ではないだろうか。
 作品を見終えた時、席から立てなかった。呆然としていた俺がいた。相変わらずダーレン・アロノフスキーは人の心を揺さぶるのがうまい。

 あらすじ
 ランディー(ミッキー・ローク)は"ラム"の愛称で、かつて大きな会場を満員にし、さらに自分が主人公のファミコンゲームが作られるほどの超有名プロレスラーだった。
 しかし時は20年ほど立ち、ブームも去ってしまった今、ランディーは細々と地方の小さな会場でプロレスをするのみだった。それも、プロレスのギャラでは食べて行けず、スーパーでバイトをしなければならないほどだった。小銭を稼いで家に帰るが、その家もトレーラーハウスで一人暮らし。長年の戦いとステロイドなどの薬品で体はボロボロだった。
 そんなある日、試合が終わり控え室に戻ってくると、どうにも体がおかしい、ふらふらっとしていると、ついに倒れてしまう。ボロボロの体にムチを打ち続けた結果、心臓がギブアップしてしまったのだ。
 一命は取り留めたものの、ついにプロレスへの出場に対してドクターストップがかかってしまった。心のよりどころとして絶縁状態にある娘に会うも拒絶され、愛した女とも…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 なんて作品だ。年老いたランディーの肉体はボロボロで、肉もたるみ気味だ。でもしょっぱなの試合から飛ばしまくる。動きの一つ一つはどうも時代遅れな感じがするのだけども、その激しさからか、なんなのか得体のしれないかっこよさがある。
 最後の試合なんか、多分ダーレン・アロノフスキーじゃ無ければひどいもんだと思う。特に最後にトップロームに上って両腕をあげるポーズ。はっきり言って、激ダサいポーズなんだ。だけどそれがいい。というかとてもかっこ良く見せるアングルなのか色合いなのか、ダサいポーズだからこそ逆にかっこ良く感じるこのマジック!ランディーの心臓と同じぐらい、観ている側の心臓もバクバクさせる。
 そう、ストーリー自体はそこまでこったものじゃない。むしろこれまで何度も使われただろう流れだった。かつて栄光をつかむが、身を崩し、家族にも見放されて孤独に過ごしていたが、再起してスターダムに戻ろうとする。良くあるパターンだ。
 けどこの映画においてこのスタンダードは意味が違う。一つはランディーのプロレススタイルで、彼は特に目立った技を使うわけじゃない。昔ながらの技を使い、あくまで演技で、ストーリーで観客を沸かせようとする「スタンダード」なのだ。また、ミッキーローク自体もかつては映画でスターとして栄華を誇るが、落ちぶれ、離婚し、孤独を味わったが再起をはかるべく「シン・シティ」などにでている、とミッキーローク自体がこの「スタンダード」のストーリーの体現者なのだ。だからそのミッキーロークがランディーの役を演じることが恐ろしくフィットしたような気がする。だから滑稽さがない。孤独と悲壮感がスクリーンから漂ってくる。