「ターミネーター4」 2009年 アメリカ

B001LF3QOAターミネーター 4 (クリスチャン・ベイル 主演) [DVD]


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 ジェームス・キャメロンが描いた超名作、超大作のT1、T2。その超大作の残りっぺ、遺産の食いつぶしとして作られたT3、TSCC。なぜこれほどまでに完全なラストを描いたT2の続編を制作するのか理解に苦しむなか、新たにT4が制作された。
 しかし、T3でのバッシングを反省したのか、T4はT3、TSCCとは決定的に違う点がある。それは「T2を本気で超えようと、そして超えれると思っている」点だ。本作はその本気度合いに置いてT3には無い、迫力と力強さが画面からビシバシと伝わってくる。
 主演のジョン・コナー役はT3のブサイク・ニック・スタールではなく、「ダークナイト」「マシニスト」で有名なクリスチャン・ベイルである。残念ながらエドワード・ファーロングではないが、この年代では今もっともHotな俳優を持って来たことが非常に好感を持てる。そしてパンフレットでのインタビューで答えているようにT3が納得できないと公言する俳優である。それだけでポイントが高い。またもう一人の主役マーカス・ライト役に新進のサム・ワシントンが抜擢されている。俺はこのワシントンを知らなかったが、なかなかいい味を出す俳優だった。
 これまでのターミネーターシリーズの世界観を保持しつつもいい意味で裏切ろうとしている野心作である。SF映画としてCGをフル活用しつつも、人間対機械というシリーズ通じてのテーマを意識して、「無機質なCG同士のバトル」を慎重にさけている。ただのバトル映画ではない、CG映画でもない、やわなヒューマニズム映画でもない。その全てのいいトコ取りの映画である。
 細かい点で突っ込みどころが多いのが玉にキズだが、そういうところを突っ込みたくなるほど完成度は高いのではないだろうか。次回作以降が気になる作品である。

 あらすじ
 警官2人と兄を殺した罪で間もなく死刑に処されるマーカス(サム・ワシントン)は、サイバーダイン社の科学者セレーナから献体を許可するサインをするように促される。
 それから10数年後、サイバーダイン社が開発したスカイネットの暴走により機械が人間に対して反旗を翻し、世界は核爆弾によって絶滅の危機に瀕している(審判の日)。一方、サラ・コナーにより戦闘やテクノロジーの英才教育を受け、スカイネットに関する未来までの知識を持たされたジョン・コナーは一部から「救世主」と呼ばれ、対機械との戦闘に置いて先頭に立ち、戦績をあげていた。
 そんなジョン・コナーはついにスカイネットの弱点を突くコードを手に入れることに成功した。これにより人間は4日後にスカイネットに総攻撃をかけることになった。なぜ4日後かというとスカイネットがその直後に主要な人間を殺害する計画を立てていたからだ。ジョン・コナーは2番目にリストに載っていた。そして1位はジョンの父親であるカイルであった…
 ジョンがコードを手に入れた基地では何人もの人間が捕虜になっていた。その全ては直後の爆発により全滅したが、マーカスだけは奇跡的に生き残った。マーカスは当ても無く歩き続けとある街に訪れたとき、T-600により殺されかけるが、まだ10代のあどけなさを残しつつも一人で子供のスターを守り続けていたカイルと出会う。マーカスはカイルとともに英雄ジョン・コナーに会おうとするが…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 しょっぱなのジョン・コナーの激しい戦闘シーンからずっとスロットル全開である。特に最初のシーンは相手こそ機械ではあるが、プライベート・ライアンブラックホーク・ダウンを見ているかのようなリアルな戦闘シーンでSFを見ているのか疑いたくなるほどだった。でもT2とかで出て来た機械との戦闘の描写をうまくとけ込ましていて、ちょうどいい具合の混ぜ具合だった。このシーンだけで気合いを感じた。
 戦闘シーンは白熱するが、それだけのアクション映画ではない。ジョン・コナーが途中ラジオで演説するように、人間が人間たるにはどうあるべきか、というテーマを所々にしっかりとちりばめている。
 その象徴とも言えるのがマーカスである。本人の知らない間に機械にされてしまい、それも気付かずに機械と戦っていた。そのマーカスが自分が機械だと知ったときの絶望感…あのシーンはゾクゾクきますね。「ダークナイト」でマイケル・ケインが顔の半分を失ったときのあの絶望感と同じく、悲壮感ただようあの叫び。サム・ワシントンが好きになりました。でもマーカスは自分を機械と知っても、人間の心を失わない。スカイネットの中枢に入っても、スカイネットからその本当の目的を聞いても決してぶれない。「俺は人間だ!」という力強さがありましたね。
 正直、細かい点で突っ込みどころは満載だった。T-800と戦うときも生身の人間がT-800のパンチ食らったら粉々でしょ?とかなんでカイルを捕まえたらすぐ殺さないの?とかそもそもカイルの顔情報とかどこで手に入れたの?とかカイルがジョン・コナーの父親ってもう知ってるの?とかマーカスがスカイネットと同期されたら洗脳されるんじゃないの?とか核爆弾をそんな近くで爆発させたら死ぬよ?とかキリが無い。でも、それを打ち砕くだけの迫力があったからまぁよしとしよう。何よりも見終わった後にすぐ続編が観たくなった。これだけで十分だ。
 審判の日の後を描いた本作。そういう意味では「どんなことがあっても歴史は変わらない。少々時間がずれるかもしれないけどね」という設定を作ったT3はこの点においてだけ評価されてもいいと思う。作品自体はゼッタイに認めないが(笑)
 あと、何よりも驚いたのが、T-800が出て来たと思ったら、シュワルツネッガーの顔わけぇ!!!!!ってところ。これにはビックリした。「うぉぉおお」とうなりましたよね。CG技術ハンパねぇ。これだけでも観る価値あり(笑)