「銃・病原菌・鉄」を読んで

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

 現在、世界は不均衡の中にある。南北問題なんて言われているが、世界の富のほとんどは北半球に集まり、なかでもアメリカ・ヨーロッパに集中している。つまり白人が富を保持しているのだ。それはなぜ起こりえたのか?つまり黒人の多いアフリカ大陸の人々が、白人の多いヨーロッパ人を使って工業を起こして富を搾取することが、なぜ起きなかったのか。本書では、その象徴として、スペイン人によるインカ帝国の征服によって語られている。
 直接的には題名の通り、アフリカやインカ帝国は銃と病原菌と鉄を持っていなかったことに原因がある。しかし、アフリカやインカ帝国はなぜそれらを持ち得なかったのか?本書では究極的には「大陸ごとの形状」と「大陸ごとに存在する動植物の種類」の2点だけで説明されている。
 上記の2点を本書では上下巻あわせて600ページに及んで言及している。膨大なケースを事細かに説明しているが、正直、似たようなケースを何度も説明しているので、読んでて辛い時期もある(笑)でも、一つのケースだけでは「たまたまじゃね?」で片付けられる危険性もあるので、複数のケースで粘り強く説明する必要があるということだろう。
 大陸の形状や動植物の存在についての言及も面白かったが、個人的にはニューギニアとその周辺諸国に置ける、社会集団の発展に関する言及がとても面白かった。経済学とかを勉強していたときに、似たようなことを考えていたのだが、それが非常にすっきりと明確にまとめられていたのがよかった。