「自虐の詩」 2007年

 しまった!なぜこれを映画館で観なかったのか…面白そうとは思っていたが、映画館で観るまではいかなかった。でも今、それを激しく後悔している!
 とにかく観て欲しい、パッケージにあるとおり、ちゃぶ台返しだけでも必見モノだ!(笑)かつてこれまでちゃぶ台返しにこだわったものがあっただろうか(笑)さまざまなパターン。あの米粒やマグロがあんなに美しく飛び交う映画は他には観られない(笑)
 だが、ちゃんとコメディーの王道よろしく、だんだんと甘ったるいメロドラマに入っていく。舞台が新世界というのもあってか、まるで新喜劇を観ているようだ。この甘ったるさは、ただのドラマの中にあってはしらけてしまうが、コメディーだから許されるのだ。むしろコメディーには欠かせない要素とさえいえる。
 また、演じる役者がいい!主演の中谷美紀阿部寛はもちろんのこと、竜雷太カルーセル麻紀、さらには西田敏行まで出ている。(さらにいうと、俺の好きな遠藤憲一や蛭子まで出ている)特に中谷美紀がいい!あんなにすっぴんで(もちろんすっぴんぽく見えるメイクだろうが)あんなにキレイなのはすばらしいし、昔の荒れていたときもキレイすぎる。阿部寛のロンゲは置いておいて(笑)
 何も考えずに一度観てほしい。コメディだから何も考えるべきではないし(笑)

 あらすじ
 幸江(中谷美紀)は幼い頃に母親に捨てられ、親父(西田敏行)は銀行強盗で捕まり、学校ではいじめられ、大人になるとイサオ阿部寛)を一人で養うという世界でもっとも不幸な女だ。イサオは働きもせず、金を幸江にせびり、ギャンブル三昧である。
 周りの人からは幸江に対してイサオと別れろとアドバイスし続ける。でもそんな幸江はイサオをなぜか愛している。イサオは世界で一番ダメな人間だが、昔幸江の窮地を救い、幸江をバカにする奴は徹底的に叩きのめすように愛しているからだ。
 でもそんな幸江がイサオの子を身ごもったとき、イサオは冷たく幸江に当たる。また幸江は不幸のどん底に落とされ、どん底の果てに事故で生死をさまよう羽目になったとき…

 <ここからネタバレの可能性あり!!>
 イサオは幸江に一目ぼれしていたのだ。幸江は東京に来て、落ちぶれてシャブ中の売春婦に成り下がる。そして映画の中ではブスという設定なのだろう(ある意味でミスキャストである。かといって本当にブスが演じてしまうと台無しなのでこれでいいのだが)か、1万円でも高いといわれてしまうのだ。でもそんなイサオは幸江にほれる。なぜだろう?やっぱりキレイだからだろうか?それともしぶとく生きる幸江がよかったのだろうか?幸江は自然体である。素直である。きっとそんなところにほれたんだろう。
 イサオは芯が通っていて、身をきれいにして幸江を迎える。一昔前の男のようで不器用丸出しである。でもその素朴さに幸江もほれて、素朴同士のいいカップルになる。そんなイサオがなぜあそこまでグータラになってしまうのかが不思議だが(笑)
 しかし、最後のエンドロールの後のシーンがいいなぁ。二人がいつか見た海を眺めながら、ふと幸江のおなかから赤ちゃんが出てくる。それを見つめるイサオ、そしてイサオを見つめる幸江、さらに"人生には等しく意味がある"というセリフ…めちゃくちゃいい演技で、あったかいシーンじゃないですか。やっぱりこの映画は新喜劇だな(笑)関西人ならぐっと来ること間違いなし!
 いやー、この映画の監督(堤 幸彦って結構いろいろと撮ってるんですね)と脚本家は要チェックじゃないですか?見せ方がめちゃくちゃうまい。絶妙なバランスではないだろうか。すこしでも甘ったるけりゃやすっぽすぎるし、笑いだけに走ってりゃ心には残らない。いいバランスだと思いますよ。