「誰も知らない」 2004年 日本

     

 僕は邦画否定派です。(前にも書いたかな?邦画で認めるのは黒澤映画と「三月のライオン」ぐらいだ)特に最近の邦画はとにかく嫌いです。
 そんな僕が「誰も知らない」を観に行きました。それだけでもすごいもんです。僕が「アカルイミライ」を観てブチ切れてから、邦画を映画館で観る事は無いと思ってたんですが、この「誰も知らない」は不思議な魅力がありましたね。カンヌで主演男優賞を取ったというのがもっとも大きかったですが、ポスターやトレーラーもおもしろそうでしたね。
 とにかく、この映画は不思議な魅力があります。うーん、「三月のライオン」にもあったような、「生きてく強さ」を感じさせる良い映画でした。見て本当に良かったと思える一本です!邦画嫌いの僕が言うんだから間違いなし!

 あらすじ 
 父親がそれぞれ違う兄妹4人と、母親の福島けい子(YOU)の母子家庭。しかも、長男の明(12歳)を除く3人は大家にその存在さえ知られていない。明(柳楽優弥)が家事をすべてこなし、他の子供たちは学校に通うことも、家から出ることもできない。しかし、この家族は母親と長男を中心にまとまり、それなりに幸せな家庭を築いている。
 しかし、あるとき母親は新しい恋人を見つける。しかし子供たちの存在を知らせることができない。そんなある日、明宛に「お母さんはしばらく留守にします。京子、茂、ゆきをよろしくね」というメモと現金20万円を残して突然いなくなる。
 なんとか明は母親の居場所を見つけ電話をかけてみるすると

「はい、山本です」
 と山本性を名乗るけい子の声が…
 もう、母親は帰ってこない。こうして小学6年生の明が家庭を支えなくてはならなくなった。

 <ここからネタバレ!!>

 まず、映画の始まり方がおもしろかったですね。けい子と明が引っ越してくる、引越し屋が荷物をどんどん運んでくれるのに、自分達でトランクを2つだけ大事そうに運ぶんですね。なんだろうと思ったらなんとそこから子供が出てくるではないですか!
 映画の始まりってのは非常に大事です。ここで観客を引き込めるかがその後の映画の印象に影響をあたえますからね。その点でこの始まりは非常に良かった!(これは故・淀川長治の本に書いてあって、なるほど!と思ったことです。)
 YOUの演技が非常に良かったですね!というかあれはある意味演技じゃない(笑)あんなに自然体でいられるYOUがよかったし、あれが真の演技ともいえるかもしれない。監督もあの憎めないいい加減さや、優しさが重要だといっていた。ナイスキャスティングだったと思う。確かに、やさしすぎれば物語として中途半端でつながらないし、虐待を加える母親でも成立しなかった。そういう意味でYOUの役は非常に良かったと思う。
 そう、彼らの家族はある不思議な均衡というか、幸せがあったんですね。もちろん細かい不満はあったろうけど。その不思議な感覚が重要であり、その結果半年にも及ぶ子供だけの生活が成り立ったんだと思う。彼らの生活が不幸せで、父親が違うために絆がもし薄かったなら、あっというまに生活は破綻していたでしょう。
 柳楽の演技も良かったですね。子供らしさがうまく出ていた、演技がいいというよりは、是枝監督の演出や指導が良かったのかもしれないけど。子供の弱さ、好奇心の強さゆえのもろさもとてもよく表現していたんじゃないでしょうか。
 そして、京子役の子(fotolifeの3枚目、柳楽の隣)の演技も冷静でよかったし、茂役(fotolifeの4枚目、京子の隣)の個性もよかった。そして、ユキ役の子(fotolifeの5枚目、次の段)がかわいすぎる!なんせかわいすぎる。韓 英恵(fotolifeの最後の子)もかわいかったね。不思議な魅力があったと思う。
 映画としての進行はゆるーくて、ちょっとだれる部分もあったけど、映像の表現は非常に良くて、季節感も良く出てた。観てるうちにちょっと"三月のライオン"の雰囲気にちょっと似てると思った。あ、あとなぜか"スワロウテイル"も思い出した。こういう画像表現て日本独特のものなのかな。
 最後のシーンも良かったね。あのユキが死んでしまうのは悲しいけれど、その遺体を空港の近くに埋めようとするところが子供らしい。また、あんなに大事そうに運んだけれど、素直に遺体を気持ち悪いと言えてしまうところなんかの心理描写というか子供らしさの演出がうまいな、と思いました。
 あの電車の太陽が照ってまぶしいシーンや、新しい4人の生活を見せるシーンなど、ほんとに映像が良かった。
 こういう映画は時間がたつと自分の中でよりよく熟成されていくと思う。良い映画ってのはそういうもので、自分の中でどんどん膨れ上がるものです。この映画もきっとそんな映画だと思う。