「マイケル・ジャクソン This is it」 2009年 アメリカ

マイケル・ジャクソン THIS IS IT - オフィシャルサイト

 マイケル・ジャクソンが10年ぶりにロンドンで行われるはずだった「This is it」。しかしMJはその直前で命を絶ってしまう。本作はその本人が「最後のカーテン・コールだ」といった「This is it」のリハーサル映像をもとに作成されたドキュメンタリーである。
 俺自身は83年産まれで、もっとも絶頂だったころのMJは知らない。でも、当然のように「Thriller」や「Smooth Criminal」や「Beat It」は知っていたし、「Dangerous」とかはかろうじてリアルタイムで知っていた。さらにはYoutubeとかでMJのビデオを見て、そのカリスマ性は知っていた。
 でも、2000年代に入ってからはその奇行ばかりが目立ってばかりの気がしていた。だから、本作を見て本当に衝撃を受けた。MJは今でもまったく疑うことの無いカリスマ性を持っていて、50とは思えないダンスのキレをもっていて、音楽に対するストイックなほどのこだわりを持っている。そして何よりも周りの人から愛され、崇拝される存在だということがまざまざと見せつけられる。
 MJはただの歌手じゃないし、ダンサーでもない。MJはMJであり、最高のエンターティナーなのだ。ビートルズをはじめとして、歌の世界で世界に大きな影響を与えた人たちはいる。彼らも崇拝されていたし、尊敬もする。でもあくまで対象は歌であり、そのメッセージだったりする。それに比べて、MJはMJなのだ。歌も唯一無二のものだけど、歌も、ダンスもすべてMJがいてこそなのだというのが再認識される。こんな存在が過去あっただろうか。誰にもカヴァーできないもの、それがMJの歌なのかもしれない。
 MJはそれを知ってか、リハーサルでも全てに責任を負おうとする。決して演出家や振付師に任せきらない。一小節のタイミングまで、一つの振りまで口を出す。でもそのカリスマ性からスタッフはほとんど白痴のようにMJを見て従う。その雰囲気は異様ですらある。でもMJは厳しいことを言っても感謝はもちろん忘れず、ギタリストの見せ場を用意したり、スタッフのねぎらいも行う。
 MJという唯一の存在。今後産まれ得ない存在。それをまざまざと見せつけられる2時間だった。カリスマとはこれだ。涙なしでは見られない。
 改めてご冥福をお祈りいたします。