「恋人までの距離(ディスタンス)」を観て 1995年 アメリカ

B002FKTD7Oビフォア・サンライズ 恋人までの距離 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2009-07-22

by G-Tools

続編「ビフォア・サンセット」へのリンク
 今回紹介する映画は「恋人までの距離(ディスタンス)」です。今、「ビフォア・サンセット」という名前で続編がやっています(「恋人までの距離(ディスタンス)」は原題が「ビフォア・サンライズ」。僕は邦題のほうが好きですね)。僕はこの「恋人までの距離(ディスタンス)」が大好きなので、ぜひ続編を観よう!と思い、復習をかねてこの「恋人までの距離(ディスタンス)」を観ました。
 とにかくこの映画の特徴は、ストーリーらしいストーリーが無く、ひたすら主役のイーサン・ホークジュリー・デルピーがひたすら会話するというスタイルで語られている点です。そのため実験的な映画として語られることがありますが(監督がリチャード・リンクレーターだけに余計に言われるのかな?)、僕はこれは非常に理にかなっていると思います。その理由は後で書きたいと思います。
 普段恋愛モノなんて紹介しない僕が紹介するぐらいですから、本当におもしろいですよ〜!僕の友達でマフィアモノとかが好きなDと映画の話をよくするのですが、いつもこの映画の話題になると、"理想の恋愛だよな〜"とため息をついてしまいます。そんな彼は、この映画を夢見てか(!?)、この前ヨーロッパをユーロパスでめぐってきました。とにかくおススメ!!
 この映画はひたすらおしゃれ。イーサン・ホークも若い。ジュリー・デルピーも最初はあんまりだけど、だんだんとあの顔がかわいく見えてきてしまう。これだけ感情移入できる映画ってなかなか無いと思います。

 あらすじ
 列車の中で、ドイツ人の夫婦が喧嘩をしている。なにやら倦怠期の夫婦のようだが、そのせいで狭い列車の中はとてもうるさい。特に隣に座っているセリーヌ(ジュリー・デルピー)にとっては邪魔以外のなんでもないため、席を移動することにした。移動した席の隣にはジェシー(イーサン・ホーク)が座っていた。するとそのジェシーは問いかける、

"あの人たち何を言い争ってるの?ドイツ語がわからなくて"
"わたしもフランス人だから、ドイツ語はわからないわ"
"ところで、ちょっと食堂車で飯でも食べない?"
 食堂車で話をしているうちに意気投合する。ジェシーはウィーンへ、セリーヌはパリまでの旅。2人はウィーン駅で別れるはずだったが、ジェシーが提案をする。

"もしよければ、今日1日だけ恋人にならない?"と。
 セリーヌはちょっと悩んだうち了解する。2人はウィーンを当ても無く歩く、時には人に声をかけて良い観光地が無いかたずねる。あるときは占い師に声をかけられて占ってもらう。そして2人は歩きながらいろいろな話をする。

"生まれ変わりを信じる?"
"もし、生まれ変わりがあるとすれば、
昔人の人口は100万人ぐらいの時期もあっただろう、
200万人ぐらいのときもあっただろう。
でも今は?50億人はいる。
とするならば、今の僕は100万人いたときの魂の500分の1に分割された存在?
僕がこんな支離滅裂なことを言うのは、
僕が"500分の1"だから?"
 2人はいろいろ話す。幼いころの思い出、悩み、家族、恋愛、人生…

 <ここからネタバレ!!>
 くはー!最後切ねー!!てか再開の約束してよかった!うん。でも本当に再開できるのでしょうか?本人たちも実は自信がないんですよね。そして再開の約束を本当にしてよかったのか?という若干の疑問も持っている気がします。うーん。せつなすぎる。
 会話も非常におもしろかった。個人的には、あらすじに書いた"500分の1の生まれ変わり"と、"科学が発達しても、人はゆとりを持つどころか忙しくなってる"ってのに共感を覚えました。特に後半は僕も日々思っていたことなのでびっくりでした!
 この映画が好きになった人は同じリチャード・リンクレーターの「ウェイキング・ライフ [DVD]」を観るといいでしょう。別に映画自体はおもしろくないのですが、「恋人までの距離(ディスタンス)」ファンにはたまらないワンシーンがあります(笑)
 この映画はさっきも書いたように非常に実験的な映画ですが、僕はすごい理にかなっていると思います。一般的な映画はなにか出来事を重ねていくことにより、登場人物の内面の感情や、性格を説明します。そうしないと、文学のように説明ができないんですよね。ところがこの映画は会話することによって、それも、登場人物の内面(恋愛、人生観などの考え方)を直接的に話します。それによって、僕たち観客はよりわかりやすく登場人物の内面を理解することができるようになるのです。
 これによって、僕たち観客は感情移入がしやすいですよね。というか"感情移入してしまう"という表現のほうが正しいかもしれません。感情移入できるか出来ないかというのは、その映画を評価する際で非常に重要といえるでしょう。感情移入できると、もう観客と主人公って1つなんですよね。主人公が感じたことを同じように僕たちも感じることが出来るとうのは素晴らしい。それをやってのけたリチャード・リンクレーターはすばらしい!
 この映画は本当におもしろい!でもなんでDVDになってねぇんだよ!おーい!売る時期逃してるぞー(笑)まぁ、ビフォア・サンセットがDVDになるころに"リチャード・リンクレーターBOX"とかって、出ると思うんでそのとき買おうかな。