「シティ・オブ・ゴッド」 2002年 ブラジル

 今回紹介するのはブラジル映画!はっきり言ってこの映画以外ブラジル映画は知りません(観てても気づかん)。この映画は去年良く一緒に行く友達が"絶対おもしろいから"ということで、前情報ゼロの状態で行ったものでした。さて、その結果というと…見事、2003年yasyas映画賞最優秀作品賞に選ばれました!!!(脳内映画賞)
 この映画は実話なんですね。ブラジルのリオデジャネイロのすぐ近くのファベーラと呼ばれるスラム街を舞台にした映画で、役者もそこからスカウトして指導したという気合の入れよう!おもしろいですよ!

 あらすじ 
 リオのすぐそばにあるファベーラ(スラム)、そこは通称"シティ・オブゴッド"と呼ばれていた。リオのすぐ隣にもかかわらず、電気も無く、水道無い貧困の町だ。そこにいたギャングの"優しき3人組"は、ファベーラを通る車を襲って住民に配っていた。その弟(ベネ)とその友達(ダイス)はその3人組にあこがれる。そして優しき3人組の弟ながらも、ギャングにならなかったブスカペ。
 優しき3人組に入りたかったダイスはやがてモーテル襲撃を考える。優しき3人組は殺しはしない。ダイスは見張りをして3人が襲撃をする。そのときダイスから合図が来る。3人は逃げるがダイスはなぜか見つからなかった。何とか逃げ切れるが、次の日モーテルにいた人間が銃で殺されることを知る。
 3人組は殺人犯になり、ギャングをやめて生活することになるが、そのときダイスがギャングとなって生きていることを知る。そして血に飢えたダイスがファベーラを支配していくことになる。
 こうして、ベネ、ダイス、そしてブスカペの大人の時代へと進む。

 <ここからネタバレ!!>
 ブラジルの超インフレーション時代に踊らされるブラジルの人たち。この映画は実話なので固そうなイメージがありますが、時代を感じさせる音楽や、乾いたイメージの映像、そして何よりも役者たちが生き生きしているところが固そうなイメージをぶっ壊してくれます。地元ではこんなシリアスな実話をエンターテイメント性ばかり強調して映画化するなんて不謹慎だ!という意見もあったそうですが、僕はそうはおもいません。むしろ評価したいなと思います。
 だって、固い話を固い映画にして誰が見るんです?そんな社会派映画なんておもしろくないじゃないですか。この映画はエンターテイメント性を非常に重視していますが、メッセージ性や訴えたいものを軽視しているわけでは決してありません。むしろ、そのコントラストがメッセージを浮き立たせているように思います。
 映画はこの後、ダイスの狂気とも呼べる性格であっという間にファベーラを支配しますね。しかしダイスに支配された地域は不思議と安全なんです。それはダイスが守ってるから、という逆転があるんですね。ちょうどヤクザの本部がある地域は不思議と静かで安全というのとおなじですね(笑)
 でも人々はダイスを恐れます。そして、優しいベネに人望が集まるんですね。ベネは優しい。部下に優しく声をかけ、時にはいろいろとおごったりもする。ベネがうまくダイスの狂気を抑えるんですね。そんなベネが殺されてしまう。もうダイスを抑えるものがいない。この時点で結末が決まっているとも言えるかもしれない。そして、ファベーラはまたしても混乱の渦に落ちていく。
 この映画は本当に人々の描写がうまいと思います。少年の感情。特にダイスの孤独感や嫉妬心、そしてボスであってもまだまだ子供であるこう心理をうまく描いている気がします。テンポも非常に良くて、130分という時間でも密度が濃く、そして退屈させず、観客をおいていくことも無くできていると思います。
 こういう変化の激しい時代は活気がありますね。いろいろなもののサイクルが早い。音楽やファッション。そしてギャングのサイクル…"時代は繰り返す"ということをはっきりわからせる映画でした。
 でも、そこに"生"というもの、"血"というものをイメージさせるパワーを感じましたね。非常にいい作品です。
 あと、DVDに入っていた特典の短編集もよかった!やっぱりDVDを買うのは特典目当てですね。