「野良犬」 1949年 日本

 久々に映画のレビューです。いや、このダイアリーが映画レビューサイトであることをすっかり忘れてました。

 最近映画を昔ほどは見れませんが、それにしてもいい映画に出会わない。最近の映画はやっぱりだめですね。そんな時、黒澤映画で見忘れていた映画があったので観ました。それがこの「野良犬」です。

 やっぱり黒澤は偉大だ!本当に僕の黒澤論を書きたいです。(めんどくさい思い半分)

 あらすじ
 村上(三船敏郎)は射撃練習を終え、バスで帰る。真夏の蒸し暑い中でバスは異常な熱気がこもっている。目の前に安い香水の匂いをさせる女が余計にムカムカさせる。しかし、ハッと気づくと、上着に入れていたコルト(ピストル)が盗まれている!怪しい男を追うが逃してしまう。
 村上は上司の助言で、スリ課の老刑事を紹介してもらい、まず女を追う。そうこうして、ピストル屋の存在を知った村上は捕まえようとするが、ヘマをしてしまう。そして、村上は名刑事の佐藤(志村喬!!)と組んで捜査することになる。
 そんななか、村上のコルトでピストル強盗が発生してしまう!!!
 ピストル屋の情報から浮かんできた遊佐という男の存在。そして、その遊佐に近いダンサーの並木ハルミという女。村上と佐藤は遊佐という男を追うが、第二、第三の事件が起こる。
 コルトにこめられた弾丸は7発。残りは4発。事件はまだおきる可能性がある…

 <ここからネタバレ!!>

 黒澤はすごい!「天国と地獄」を観たときに確信したが、黒澤はサスペンスを撮らせても一級品を作ってしまう。黒澤は人の心をつかむのが非常にうまい!臨場感あふれる展開に思わずドキドキしてしまいますね。臨場感あふれる展開と書きましたが、この映画は日本での最初のクライム・サスペンス・ムービーだそうです。ここまでの臨場感あふれる映画は日本にはなかった!これは黒澤の隠れた功績ではないでしょうか?
 この映画には志村喬が出ています!もう、本当に志村喬はいいですね。内に秘めた力強さがあり、父親のような暖かさもあります。この志村喬演じる佐藤刑事の導きによって、村上は成長し、事件は解決に向かいます。
 佐藤刑事によって、事件はまっすぐ解決に向かっていきます。が、野球場でのひと悶着や、並木ハルミのダンスシーン、また最初の村上の軍服姿での町の闊歩など常に人に飽きさせない工夫がこらされています。黒澤はやっぱり、静と動を常に考えて画面構成を立てていますね。特に、並木ハルミの家で、微妙に母親を動かして、カメラの動きをさりげなく作ってるところとかが絶妙です。
 そして、佐藤刑事が撃たれて、並木ハルミの情報でバス停に行くシーン!犯人を捕まえたいが、顔がわからない!このクイズのようなシーンが緊張の絶頂ですね!ホントにハラハラドキドキです。そして、犯人を捕まえた後、2人はハァハァと息を切らし、後ろで子供たちが歌を歌うこの対比!「生きる」で志村喬が、公園を作ろうと決心し、喫茶店を出るために階段を下りるシーンでの、志村と女学生の”ハッピーバースデー”の歌の対比のような見事な対比の演出ですね!
 この映画はホントにおもしろかったです。と、同時に最近の映画のつまらなさを再確認してしまいました。確かに映画はもう100年の歴史をもち、技法やジャンルが出尽くしたともいわれていますが、ホントにそうなんでしょうか?小説はそれをはるかに超えた本数と年月がたっているのに、映画はたった100年で終わる芸術なんでしょうか?