「ソラリス」 2003年 アメリカ
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良かった。期待してなかっただけにビックリ。なんやら「惑星ソラリス」のリメークらしく、その原作は「2001年宇宙の旅」とならんで名作らしい。「2001年」フリークの僕としては、ほっとけない売り文句ではないか。僕にとって黒澤明とキューブリックは、もっとも偉大な監督です。そしてキューブリックのもっとも重要な作品は「2001年」だと思っています。そして、見る気になったのは、映画のトレーラーに流れたキレイな音楽。静かで、キレイで、不思議な雰囲気を醸し出してました。それで見ようと思ったんですね。
この映画はそれだけしか知らず、あまり売れなかったということと、「ソラリス」のビデオのパッケージから想像するだけだったので、あらすじさえしらず。でも本当に良い映画だと思ったんだけどなぁ。最近は良い映画が売れないです。まぁ売れセンの映画とは思わなかったけど。また、元の「惑星ソラリス」ファンから、"「ソラリス」を撮った映画スタッフは全員、地獄に落ちるがいい!"と言われたそうです…
あらすじ
精神科医のクリス(ジョージ・クルーニー)は、惑星ソラリスを探索中の宇宙船"プロメテウス"に乗っている友人ジバリアンから、あるビデオ・メッセージを受け取る。それは"宇宙船に危機が訪れているため、救出に来て欲しい、そのためには"精神科医"である君が適任である"という不思議なメッセージ。
友人を助けるために、プロメテウスに発ったクリスは友人ジバリアンやその他研究者の遺体を発見する。生き残りを2人見つけるが心を閉ざしている。深く事情を聞くと、"君に話をすることは可能だが、君に理解できるとは思えない"という謎の発言をする。
その夜、クリスは密室の部屋で寝ていると、不思議な夢を見る。それは妻のレイヤの夢だった。しかし、夢が覚めると同じベッドにレイヤがいた。昔、自分が原因で自殺したはずなのに…
人間ではない。それだけは確かだった。でも、もしかしたら、過去の過ちをやり直す事ができるかもしれない。それ以上に、レイヤと一緒にいられることがうれしかった。
＜ここからネタバレ！！＞
この映画、ジャンルで言えばSFです。でもその真髄はラブ・ストーリーなんですね。あらすじを見た限りでは、ここからレイヤが悪の世界に引きずり込むんじゃないか？とか、レイヤは実はエイリアンじゃないか？とかっていう、ありがちなSFを想像するかもしれませんね。一切そんなことはありません。
レイヤはあくまで、クリスの記憶によって作られたものなんですね。なので、レイヤはクリスが覚えていることを覚えているだけであり、自分にそれを経験した実感がない。そして、自分が自分でないこともはっきりと把握できてしまう。
一方のクリスもレイヤの苦悩をなんとなく悟る。でも、レイヤが現れたのは過去の過ちをやり直すチャンスと考える。そしてなんとか地球に帰れば、どうにかなるんじゃないか？と思う。2人の間には苦悩が走るわけですね。そして、彼の記憶から産まれたレイヤは彼にとって完璧なレイヤであり、偽者と信じたくないという強烈で強制的な無意識がある。
そんななか、ついにレイヤは自殺を図る。この自殺を図るという結果も、クリスの苦い記憶から産まれたレイヤの特性によるものです。しかし、レイヤは死ねない。それもおぞましいともいえる蘇生の仕方をする。それによって、決定的に偽者であるということが証明され、レイヤのアイデンティティは完全に崩壊する。
レイヤが死ぬためには、物理的に完全に消去するしかない。そして、その装置がプロメテウスにはあった。クリスはそれを阻止するため2人で部屋にこもるが、レイヤは結局抜け出して消去される。
クリスと生き残ったクルーは地球に帰ろうとする。しかし、クリスだけは寸前になってプロメテウスに残る。宇宙船はソラリスに落ちた。
しかし、そこでクリスはレイヤと同等の存在となり、クリスの記憶の世界へと上っていく、そのときレイヤは「すべて許されたのよ、すべて」といい、2人は抱き合った。惑星ソラリスこそが天国だったのだろうか？
くはぁー、良い映画じゃないですか！なんか話自体はありそうな話ですが。この宇宙船の不思議な雰囲気ときれいな映像、そしてきれいな音楽が織り交ざり、ジョージの久々の良い演技のバランスが良かったと思います。とても99分とは思えない密度だったと思います。
ソダーバーグの映画はあまり好きじゃなかったんですが、この映画でちょっと見直しましたね。ジョージもバイセクシャルってイメージがこべりついてたんですが、やっぱり渋いですね。良い感じに年取ってきましたよ。
僕はこういう、人間の弱さ、苦悩、2面性ってのが好きですね。1972年に作られた原作「惑星ソラリス」。観たいですね。
