清水市代女流王将 vs あから2010


 社団法人情報処理学会日本将棋連盟に対して挑戦状を叩きつけたことで実現した、コンピュータvsプロ棋士対戦の第一回が本日東大の工学部で行われ、実際に現地に行ってきました。
 日本将棋連盟はこのコンピュータvsプロ棋士の対戦をショーアップするために、まずは女流トップ棋士である清水市代を対戦相手に選びました。これに勝てば下位男子プロを、それにも勝てばトップ男子プロを当てるというのです。(そこれへんの事情は「人間VSコンピューター この世紀の決戦を楽しむために - 俺の邪悪なメモ」がとても詳しく解説しています。
 現地では世紀の一瞬を見逃さないために、ファンが詰め寄り、500人収容の会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。俺もメインの部屋には入れずサブ会場で画面越しに観戦することに…まさかこんなに人が集まるとは…
 そして本日の対戦の結果ですが…13時から開局し19時ごろまでに及ぶ熱戦の末、コンピュータ(あから2010)が勝利を収めました!!!!!!ついにコンピュータがプロに勝つ時が来たのです。
 正直、この対戦が始まるまではコンピュータを応援するつもりでしたが、清水市代女流王将の気迫あふれる打ち筋に思わず清水市代女流王将を応援してしまいました。実際、解説されていた佐藤康光九段や藤井猛九段も「今日の女流王将はすごい」と舌を巻くほどの気合の入り様でしたね。
 展開としてはあから2010が3手目3三角とか、4五桂(これは清水市代女流王将は読んでいたそうですが…)、4四角の2回打ち、5七角打ち等々、やはり人間ぽくない打ち筋で女流王将も思わず考慮時間が伸びてしまいがちになりつつも、一時は女流王将が押しているようにも見える展開でしたが、結果的にはほとんどあから2010が攻めつづけ、女流王将はほぼ受けっぱなしの展開となり、終わって見れたあから2010の大勝となりました。
 コンピュータの打ち筋はかなり変わっていましたね。まず、コンピュータは膨大な棋譜から評価関数を作成しているので、定石形の打ち筋の長い将棋であれば強いだろうと考えられ、人間はそれを逆手にとってあまり例のない力戦形に持っていけば弱いと思っていたら、なんとコンピュータの方から力戦形を挑んで来たこと、これにより清水市代女流王将は惑わされました。そしてもう一つが歩が全く使われなかったこと。コンピュータは歩を取られることがありませんでした。で、それ自体がすごいのではなく、歩を取られないということは打ち歩をしなかったということであり、さらに今回は歩成もなかったこと。と金を作って攻めるのが一般的な打ち筋なのについに一回もそれがなかったこと。これはとても珍しいことではなかったでしょうか。
 しかし面白かった。画面からも気迫が伝わってくるほどのものでした。解説も面白かったし、感想戦での米長会長の奔放ぶりも相変わらず面白かった。
 米長会長によるともしかしたら、次回も女流棋士の対戦なのかもしれないそうですが、是非とも続けていただきたい。
 そして出来れば解説に情報処理学会側の人もひとり付けて欲しいですね。解説の時にアルゴリズムを少し混ぜてくれると、日本将棋連盟側の解説者もやりやすいのではないかと思います。
 いやー、しかし…コンピュータは今現在でどれぐらいの強さなんでしょうね。っていうのと、コンピュータっぽさって何なんでしょうね。打ち筋がぜんぜん違うっていうのは、まだコンピュータ将棋は発展途上にあるということなのでしょうか。それともそもそも将棋というもの自体が発展途上で収束していないということなのでしょうか。コンピュータと人間。この両面での発展が将棋の洗練さをより深めるのかもしれません。