第1回ウェブ学会シンポジウムに行ってきた(午後の部−その1)

 第1回ウェブ学会シンポジウム
 ウェブの世界では国境はないというのに、日本から世界に向けて革命的なサービスは生まれていないのはなぜか?ウェブを取り巻く環境や課題を討論するために企画されたこの第1回ウェブ学会シンポジウムに参加してきました。
 ウェブ学会らしく、会場(東大安田講堂)だけでなく、Ustreamを使っての実況を行ったり、ハッシュタグ#webgakkaiを用いたツイッターによる質問や有志の実況などが盛んに行われているエキサイティングな学会でした。
 Ustreamはすでに視聴可能になっておりますので、リンクを貼って置きます。
Ustream:午前の部
Ustream:午後の部-その1
Ustream:午後の部-その2
Ustream:午後の部-その3

まとめ:第1回ウェブ学会シンポジウムに行ってきた(午前の部)Comments
まとめ:第1回ウェブ学会シンポジウムに行ってきた(午後の部−その2,3)

 当日のメモを全部残して置きますが、午後の部-その1(セッション2:ウェブと政治)が一番面白く、会場も盛り上がったところなので、そこを先にアップします。特に3番目の鈴木健氏の「Divicracy」が一番熱かったのでそれだけでも読む価値があります。


【ネットが作る新しい政治】参議院議員 藤末健三

  • ネットの政治活用
    • ネットで献金
    • ネットでボランティアをつなぐ
  • 政治を身近にする
    • メディアが多様化している:テレビ・新離れが叫ばれている。特に若者は新聞離れが進んでおり、かつネットを情報源としているからネットでもっと政治情報を得られなければならない
    • リアル性:事業仕分けがustで中継された。このオープンさは世界でも初めての試みのはずだ。
    • 双方向性:ハトミミ.comという鳩山首相への目安箱的なサービスを提供する。twitter討論会のように直接政治家とやり取りできるようになる。
  • クリーンな政治が可能になる
    • 小口のネット献金オバマのように個人から少額をたくさん集めるモデルは利権団体からの献金を不要とし距離をおくことができる
    • お金の掛からない選挙:ネットで情報発信できれば低価格で選挙を行える
  • 選挙費用について(2004年参議院全国比例の選挙費用)
    • 藤末氏の場合、選挙期間中だけではがき15万枚、ビラ25万枚、ポスター7万枚作製した
    • 費用ははがきの郵送料で750万円、印刷代を入れると2000万円
    • 2006年参議院選挙費用総額は570億円ですべて税金で賄われる
    • 来年度の公職選挙法の改正法案の中にネット解禁も入っている。
  • ネット献金
    • アメリカでは2000年にマケインが640万ドル。それが2008年のオバマは62,200万ドルにまで増大している。
  • 長篠の戦い
    • ネットで選挙なんて実現不可能じゃないかと言われることがある
    • 武田は鉄砲の威力は知っていながら、それを組織だてて使うことができなかった
    • 織田は鉄砲を使うために、三段構えを編み出し、鉄砲隊を組織し見事に勝った。
    • ネット選挙も同じ。ネットが便利なのはわかっている。あとはそれをどう使うかだけ。
  • 課題等
    • なりすまし対策と炎上対策が必要になる
    • yahoo,googleとかが提供するプラットフォーム上で行えばいいのではないか?という話をしている。

yasyasの感想:普通にgo.jpドメインを張り出して、NTTなりYahooなりのホスティングを使えばなりすましはおきないし、どうやったって変なコメントはつくんだから承認制にしてしまえばいいのに、と思った。何を危惧しているのか


【政治的意思決定はどこまで自動化できるか?】静岡大学情報学部 准教授 佐藤哲也
プレゼン資料:http://docs.google.com/present/view?id=dc3k4924_157ddqtx5d3

  • 新しい日本の政治システム・アプリ・精度について
  • 日本人の投票行動
    • 若者は自分が投票する政党・候補者について他人に勧めない
      • タブー化されている?
    • 決して日本の若者は政治に関心が無いわけではない
    • 行かない理由は従来の政治に対する嫌悪(あきらめ?)から?今の社会に関心がないのか?
  • webの活用法
    • 世論推測手法として活用:ネットリサーチで世論を計測する
    • 投票における推薦・情報提供ツール:政治的リコメンデーション(yasyas注:votematch?)
    • 投票の自動化
  • エストニアでは2007年2月に世界初のネット投票が行われた
    • 通常の投票にくらべ、インターネットでは野党(改革党)が非常に強いという特徴があった。
  • 世論計測手法としてのweb活用(予測市場)
    • 株式市場のようなもの:集合知の一つ、多様性、独立性、分散性、集約メカニズム
    • wikipediaのような「ストック知」ではなく「フロー知」
  • 民主主義はそもそも集合知
    • 何が問題なのか
      • 投票というシステムに依存しすぎた
      • 単記投票(ひとり、ひとつの候補にだけ入れる)というのは集約プロセスとして見たときに望ましくないのではないか?
  • 市場原理を利用した予測市場の価値は?
    • 社会的雰囲気に使えるのでは?時系列比較も可能になる
    • 2009年衆議院選挙時に使われたshuugi.in
    • 出口調査をしているはずの各テレビ局等よりも正確な予想を出せた
  • まにけん!とれこめん?
  • 討議的民主主義実験
    • ランダムに選択された市民を一箇所に集めて長時間にわたる議論をさせる。
    • その結果、市民の意識・態度の変容を観察する。
  • 今後の開発アプリ
  • 政治意思決定の自動化に向けて
    • 自分の代わりに投票できるロボットができたらどうなるか?
      • 要素技術
        • 世論計測技術、政治的意思決定支援、政治的信念、DBの数値化(できるか?)、個人の政治的信念やイデオロギーをどうやって符号するか?

【Divicracy: Dividual Democracy】株式会社サルガッソー 代表取締役 鈴木 健

  • facebookで2億人の「直接民主制」が敷かれた
    • ユーザ自身が規約の変更についてユーザ自身の選挙を実施
    • 有効投票数30%の予定だったが、実際は0.3%と散々だった
      • でも数億人レベルの集団でネットの直接民主制は行われている!
      • 同時に参加者の無知と無関心が顕在化した
  • 300年ぶりの民主主義の再発明
    • 直接がいいのか間接のままがいいのか
    • 政党や利益団体等の中間団体により集約してきたが、多層化により国民の声が反映されづらくなっている
    • ⇒伝播委任システムを提案
  • 伝播委任システム
    • 1票を分割して投票できる(0.5票をAに0.5票をBに等、全然真逆の候補に入れても構わない)
    • 中間団体を仮想化:直接案に入れてもいいし、代理に選んだ人に票を入れても構わない。代理に入れた場合は、代理が選んだ票に乗っかる(伝播する)。
  • (国家)主権のアドホック
    • 投票とは敵と見方を区別するメンバーシップの厳密化である
    • 主権のアドホック
      • 利害関係に濃度はあるが、1票は1票なのでそれが票に反映できない。思いの強さがわからない。
  • 個人主義の問題
    • 矛盾を認めない、厳格な一貫性を求める個人主義は多様性を失わせる。
    • 分離能やlibitの実験
      • 右脳と左脳の疎通ができない患者が、ある人間にたいして右手で歓迎し、左手で拒否を示したことがあった
      • 本来人間は矛盾した感情を内包しうる。つまり厳格な一貫性を求めることは不可能だ
  • Dividual
    • 個人(individual)はin(打ち消し)+dividual(分割できる)=individual(分割できないもの)
  • Divicracy(分人民主主義)
    • 伝播委任システム
      • 分人性:1票を分割
      • リアルタイムでダイナミック:期日がなくなるので例えばプランA,B,Cがあったときに、どれかの案が50%を超える期間が3日続いたら可決
      • ビジュアライズ:テトリスのように票が入っていく様を見せる
  • 応用
    • facebookのような大規模SNS自治会などの地域コミュニティで活用できないか
    • Pageランクもある種の投票システム
    • 異なるテーマを同時に投票し、ひとり1票をテーマそのものから分割することで1票の重み付けができないか
  • 貨幣と投票、所有
    • 株式会社は資金(貨幣)量によって株式(投票権、所有)を得る
    • 金があるほど投票権がある。
    • これを活用できないか。場合によっては金がある人ほど重みが下がるテーマ設定も(yasyas注:これはその重み付けするのが誰なのか?というところで無理だと思うが…その重み付けから伝播委任システムで決定するつもりか?)
  • まとめ
    • 伝播委任システム
      • 中間団体、個人を分解して、分人民主主義
      • 貨幣、投票、所有と伝播委任システムを融合
  • 最後に
    • 時間を超える民主主義、種を超える民主主義(リリーの問題)

yasyasの感想:この伝播委任システムが非常に斬新で面白かった。ただ、なぜ「伝播」させないといけないのかが疑問に残る。なぜ委任というシステムを残したのか。それがなければよりシンプルだ。また実装については考える必要がある。ビジュアライズは意見表明をすることになるから、テーマによっては萎縮してしまうものもあるのではないか(児童ポルノ法とか)、あるいは不正の温床にならないか。この「伝播」と「ビジュアライズ」さえなければ、実装は簡単そうだし、分人という1点で行けば、みんなに投票権を10票与えるという運用をすれば集計が面倒なだけですぐに実現可能かと思った。

【パネルディスカッション】
東 浩紀(東京工業大学 特任教授)津田 大介(メディアジャーナリスト)濱野 智史(株式会社日本技芸 リサーチャー)+佐藤哲也+鈴木健

  • 民主主義2.0、一般意思2.0を提唱したい。ルソーが社会契約論を出した「人民は一般意思を作り、一般意志が政府を選ぶ。だから政府は一般意志に従わなければならない」だからフランス革命は起きた
  • 全体意思と一般意志は違う。みんなの意見のただの総和は全体意思。全員の意思の総和から寡婦得を取り除いたのが一般意思
  • ルソーのころは数理モデルが全く作れる環境ではなかった。佐藤氏、鈴木氏の提案はその数理モデル的実装として補完されると感じた。

濱野

  • 初音ミクが出馬する キャラクシー
    • ひとつのキャラクターに対して才能溢れるPがたくさん集っている。このモデルを政治に応用できないか。
    • N次制作/政策:バーチャルなキャラに対して個々人が得意分野を担当する。個々人間で問題が発生したら派生キャラを作って分離する。(yasyas注:バーチャルが政党で、個々人が政治家として見れば今と同じ?)

津田

  • MIAUがうまくいかなかったのは俺が金髪だからか?(笑)
  • twitterは行動が筒抜けになりがち、そして筒抜けの人こそ人気がでる
  • twitterは技術的には大したことない、しかしリアルタイムがこれまでと違う。

  • ニコニコのコメントの流れ、twitterのTLも何故かいつの間にか議論してるっぽい。フィクションとしての議論空間がある。
  • twitterの総DBは全体意思で、個々人のTLは一般意思と言えるのではないか

津田

  • (東へ)mixiはロック的で、twitterはルソー的?

  • googletwitterが出てきてルソー化した。何を言っているのかわからないだろうが(会場大爆笑)

佐藤

  • 政治の話題はネットでしにくかったが、twitter事業仕分けの時のように話しやすい雰囲気がある

津田

  • twitterは流れるから炎上しにくい。文脈を無視してくれるし、文字が足りないから書ききれないんだなと理解されやすい。
  • 記者クラブ問題の時に炎上しかけたば、藤末議員を始めとしてすつにリプライがあった。これもリアルタイムの良さ

  • 従来のブログは文脈を押さえてかけ、という圧力があった。(勉強してこい的な)でもそれは不可能だ。政治は複雑で文脈をおえていたら何時までも書けない。

鈴木

  • twitterのリアルタイム性を一般の人はどう思うか、愚衆的と言われているが

  • 愚衆性なんて今の政治だって愚衆的じゃないか!現状がうまくいってないんだから関係ない。

佐藤

  • 民主主義が成功したと言い切れる国は無いんじゃないだろうか。初音ミクは面白い。記者クラブと藤末さんの件はリアリティがあった。初音ミクならどうしたか?

津田

濱野

  • おんなじだと思う。ただ、もっとネットを使ってシステム的に集約する単位を作りたい。簡単に言えば政治家はクソ(会場爆笑)

  • クリエイティビティを向上させる仕組みとして、初音ミクがあったが、それは今の政治でそういったクリエイティビティを向上させる仕組みがないということ。

濱野

  • 森とかも一般意思に入れるとかは?

  • それは民主主義ですらない。

鈴木

  • 理念の再更新を。ルソーの概念を現代で再更新する
  • 再後に一言づつ

濱野

  • Pの皆様頑張ってください

  • SNSを使って直接民主制度。この国で民主主義がうまく入っていないのは歴史的問題があるのあもしれない。キャラクシーのように新しい概念が生まれるのもいいかもしれない。佐藤さんのようなものも実装例として言えるかもしれない。何かあれば会場の人もtwitter

津田

  • twitterとustの組み合わせは最強。事業仕分けにしてもustができた。しかも安く。ビデオジャーナリズムではないが、重要。ソースだけはとにかく見れるようにすべき。その後みんなでつっこめばいい。でもustやtwitterのせいでオフレコが難しくなった。なんでtsudaるかと聞かれるが、よろこんでくれる人がいるから。

佐藤

  • 分散的な意思決定をどうするか政治プロセスが混乱している。だから民主主義が混乱している。既存お制度は疲労している。再構築を。選挙制度の改革を民主党に期待。自民党にはオープン性を

ぶっちゃけ残りの部分はわからなかったり、眠くて飛んでたり、ついったーに夢中で聞き逃したり、サンシャイン牧場の水やりで聞き逃したりといい加減なので、すぐに書きますがまぁ適当に斜め読みしてください。